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ティガれみりゃ その4 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ3』の後編になります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 本家東方のキャラの性格口調、壊れ気味です すみません、まだ続きます。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 ======================== 4、誇りをかけた試練(後編) 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』 「ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪」 歌いながら森を往く2匹のゆっくり。 よったよったどたどた歩く、巨大ゆっくり・ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃの頭の上に乗っている、通常サイズのゆっくりゃザウルス。 全長20メートルの、くてくてだぼだぼのヌイグルミ風恐竜。 大きく開かれた口から覗く、れみりゃ種特有の下ぶくれスマイル。 その大きな顔の上の、恐竜の頭部の上では、 ゆっくりゃザウルスが、腹ばいになって、ティガれみりゃにしがみついている。 ゲスまりさに襲われて千切られた手足と尻尾は、もう殆ど回復しきっている。 ニコニコ笑いながら、体全体を左右に揺らしながらリズムをとっている。 『うっう~うぁうぁ~♪』 「うっう~うぁうぁ~♪」 ゆっくりゃザウルス……先だって子供を失った親れみりゃは、 その悲しみを払拭するかの如く、楽しげに歌う。 親れみりゃにとって、ティガれみりゃの存在は、 まさに希望であり、憧れであり、救世主であった。 このティガれみりゃと一緒なら、どんな困難も悲しみも乗り越えられる。 親れみりゃは、巨大なティガれみりゃに揺られながら、かつてない安心と勇気を感じていた。 ティガれみりゃもまた、親れみりゃのことを、 親友のように、妹のように、娘のように愛おしく感じていた。 その巨体故に、他の生物から常に避けられ続けるティガれみりゃにとって、 自分をこの上なく慕ってくれる親れみりゃの存在が、嬉しくて楽しくてたまらなかった。 この温かい気持ちをどう言えばいいのだろう? この胸にこみ上げる幸せをどう表現すればよいのだろう? そんな時、不器用なれみりゃ種がとる行動は一つ。 嬉しい時も、悲しい時も、わき上がる思いをあらわにして。 (歌っちゃおう♪) (踊っちゃおう♪) 『ティガ☆』 「れみ☆」 『りゃ☆』 「うー♪」 『「にぱぁ~~~♪」』 決まったぁー♪ 渾身の「れみりゃ☆うー」が決まり、 ますます幸福感に包まれる2人のれみりゃ。 そんな2人の前に、1人の少女が現れた。 「やぁ! ずいぶんと御機嫌だねぇ~」 少女は空を飛んでいた。 知識のあるゆっくりならば、その時点でその少女が人間ではないこと。 恐い人間よりもさらに恐ろしい、妖怪と呼ばれる存在であることに気付いただろう。 しかし、そんな知識、れみりゃ種に求めるのは酷である。 『うっうー♪ れみりゃはいつでも御機嫌だどぉー♪』 「うー♪ おねぇーさんだぁーれだどぉ?」 屈託無い笑顔で少女とのコミュニケーションに応じる2人のれみりゃ。 「……ふふ、まぁ名乗るほどのものじゃないさ」 そう言って口の端を歪める少女。 『う~? おねぇーさんの角、とぉ~~ってもかっこいいどぉ~~♪』 そう言って、目を輝かせるティガれみりゃ。 角。 そう、少女の頭には、二本の角が生えていた。 れみりゃ達が知るよしも無いが、この少女こそ、 既に幻想郷からは姿を消したといわれていた伝説の種族・"鬼"の一角、 小さな百鬼夜行、伊吹萃香であった。 「それより聞きたいんだけどさ……」 『う~、なんでもきくがいいどぉ♪』 「ゆっくりれみりゃってのは、おまえ達のことであってる?」 『「うーっ♪」』 嬉しそうに反応する、2人のれみりゃ。 『そうだどぉー! れみりゃは~~♪ ティガれみりゃだどぉ~~~♪』 ティガれみりゃは、両手を頭の横に持ち上げ、うぁうぁとリズムを取り出す。 『「うっうーうぁうぁ♪ うっうーうぁぅぁ♪」』 最高に上機嫌なれみりゃ達。 そんなれみりゃ達に、萃香の真意など図れるわけがなかった。 「そりゃよかったよ。おまえ達をさがしていたんだ」 『「う~~?」』 不思議そうに首を傾げる、れみりゃ達。 「そう、おまえ達がほしいんだ」 笑顔のまま屈託なく告げる萃香。 一方、れみりゃ達は、いっぱく置いた後、 両手を自分の頬に充てて、身をよじりだした。 『きゃーきゃー♪ おねぇーさんだいたんなんだどぉーー♪』 「すとれーとなあいのこくはくだどぉーーー♪」 頬を赤くして、きゃーきゃー騒ぐ、れみりゃ達。 れみりゃ達は、萃香の言葉を、プロポーズと勘違いしていた。 「ま、というわけでね、どっちか一人でいいんで、私についてきて欲しいだ」 空高くを指さす萃香。 『「う?」』 意味を理解しかねる、れみりゃ達。 萃香は、山の上の天上の地で、大宴会を開こうとしていた。 しかし、天上の地にあるツマミといえば桃くらいのもの。 やはりここは塩味のもの、お腹にたまるものも欲しい。 腹が減っては夜通しどんちゃん騒ぎもできぬ。である。 そこで、萃香はかねてから噂に聞いていた珍味。 ゆっくりれみりゃの肉まんを探していたのだ。 それも、ただのれみりゃ肉まんではない。 一層珍しく、美味しいとされる、ゆっくりゃザウルスの肉まんをだ。 そんな折、巨大な肉まん……もとい巨大なゆっくりゃザウルスがやって来るのを見つけたのだった。 話に聞いていたのとは、ずいぶんサイズが違うが、 まぁ本人達がれみりゃだと言っているのだから、そうなのだろう。 萃香は納得し、ティガれみりゃ達を連れ去ろうとする。 しかし、それに異を唱えたのは、他ならぬれみりゃ達だった。 「う~~~! イヤだどぉ~~~! れみりゃはもうおうちにかえりたいんだどぉ~~~!」 『う~~~、そうだどぉ~~~! れみりゃたちはおねぇーさんとはいけないんだどぉ』 ティガれみりゃは、親れみりゃをお家(紅魔館)に送り届ける途中であった。 もっとも、2人とも紅魔館の場所など知らず、適当に歌って踊って歩いているだけであったが。 「ふーんそっかぁ……それは困ったな」 ちっとも困った風じゃない顔をして、萃香は腕組みをして考えるフリをする。 「……よし! じゃあこうしよう! 私と勝負して勝った方が負けた方の言うことを聞く!」 明らかに強引な論法。 だが、れみりゃ相手には、このムチャクチャな単純さが功をそうした。 『う~~~、わかったどぉ♪ れみりゃがあいてになるどぉ♪』 「おっ、話がわかるじゃないか! デカイの!」 『そんなに褒められると、さすがに照れてしまうどぉ~~♪』 もじもじと体をよじるティガれみりゃ。 "デカイ"というのは、褒め言葉として捉えるらしい。 『う~♪ れみりゃが勝ったら、おねぇーさんの角が欲しいどぉ♪ それがあれば、れみりゃはさらにぱーふぇくとなれでぃーになれるどぉ♪』 「はいはい」 適当に流す萃香。 「きゃーっ! ティガれみりゃがさらにかっこよくなっちゃうどぉー!」 興奮する親れみりゃ。 ティガれみりゃは、そんな親れみりゃを手に乗せ、少し離れた場所の地面に降ろす。 『あぶないがらぁ~ちっちゃいれみりゃはそこで見ててぇ~♪』 「わかったどぉ! ティガれみりゃ~がんばるんだどぉ♪」 『う~♪ まかせるんだどぉ♪ ちっちゃいれみりゃもおうえんじでねぇ~ん♪』 「うー! まかせとけだどぉ♪」 「やれやれ……そろそろいいかい?」 待ちくたびれて、肩をまわす萃香。 『うーっ、準備おっけぇーだどぉ♪ おねぇーさんなんかイチコロだどぉー!』 「ふーん、はたしてそうかな♪」 萃香は笑みをこぼし、スペルカードを使用する。 鬼神"ミッシングパープルパワー" 『「ううううう~~~~っ!?」』 目を丸くして驚く、ティガれみりゃと親れみりゃ。 小さな人間の少女でしかなかった萃香が、みるみる間に大きくなり、 いまやティガれみりゃと同等か、それより一回り大きい姿になっていた。 『うー♪ おねぇーさんおっききぃどぉー』 自分より一回り多くなった萃香を見上げるティガれみりゃ。 「それじゃ、勝負開始といこうか!」 『うっうー! いっくどぉー♪』 ぎゃぉー! と叫びながら、ティガれみりゃが萃香に突進する。 いや、正しくは、それは突進などと呼べるシロモノではなかった。 どたばたどたばた。 短い手足を振り回しながら、えっちらおっちらやって来るティガれみりゃ。 (……お、遅っ) 萃香は、逆の意味で驚きつつ、 わけもなくティガれみりゃの突進をかわす。 『うっ?』 ドターン。 勢いそのままに前のめりに倒れるティガれみりゃ。 普通のれみりゃ種ならば、ここで泣き叫ぶところだが……。 『う~、ゆだんしちゃったどぉ♪』 ティガれみりゃは、笑顔のまま立ち上がる。 この点こそが、ティガれみりゃ最大の強点であった。 体の大きさや防御力ではない、言わば痛みを痛みとして認識しない超鈍感力。 根拠無きポジティブシンキングと思いこみ、そして実際に鈍い五感と思考の速度。 その自身が置かれた状況に対する"鈍さ"が、痛みや苦しみを和らげ、 いいこと・たのしいことだけを考えさせる。 そんな鈍感力こそが、ティガれみりゃの得た、ゆっくりするための切り札といえる。 『おねぇーさんはつよいからぁー、れみりゃもとっておきを披露するどぉ♪』 「ふーん、とっておきねぇ」 『くらっておどろくどぉ♪』 ティガれみりゃは、萃香に背を向けると、 両手を腰にあて、おしりと尻尾を左右に振り出した。 『ティガれみりゃの~、の☆う☆さ☆つ☆しっぽふりふりぃ~~だどぉ♪』 「きゃぁ~~~! しぇくしぃーーーすぎるどぉ♪」 ティガれみりゃの勇姿を見て、地上の親れみりゃが興奮する。 あんなセクシーな姿を見せられては、 どんな相手もメロメロになってしまわずにはいられない! 顔を紅潮させて叫ぶ親れみりゃは、本気でそう信じていた。 『うっふぅ~~~ん♪ 尻尾ふ~りぃふりぃ~~♪』 尻尾を左右に振りながら、徐々に萃香に近寄っていくティガれみりゃ。 だが、萃香は溜息をつくと、その尻尾をむんずと掴んだ。 『うっ?』 「そぉーら!」 『ううううっ!?』 萃香は尻尾を綱引きのように引っ張り、ティガれみりゃを引き寄せる。 ティガれみりゃは抗おうとジタバタするが、結局萃香の目の前まで引っ張られ、 「う~♪」と反転して萃香の方を向いた瞬間、両脇を掴まれ、空中に持ち上げられてしまった。 『うっうー♪ つかまっちゃったどぉ♪』 まだ余裕なティガれみりゃ。 『う~~~♪ たかいたかぁ~い♪』 いつも以上に高い位置からの眺めに、ご満悦だ。 「すっごいどぉー! ティガれみりゃがおそらをとんでるどぉーー!」 そんなティガれみりゃを見て、興奮する親れみりゃ。 「……はぁ」 ただ一人、萃香だけがテンションを下げていた。 『うー、おねぇーさんはつよくてやさしぃんだどぉ♪ れみりゃのめしつかいにしてあげるどぉ♪』 萃香が自分のために高い高いをしてくれているものと信じるティガれみりゃ。 観戦している親れみりゃにしても、萃香がティガれみりゃの力に恐れをなして、 "こうさんです~あなたがいちばんです~"とあがめているのだと勝手に思いこんでいる。 (もういっか。宴会に遅れてもなんだし) れみりゃ種のペースに巻き込まれているのがバカらしくなった萃香は、 さっさと勝負を決めることにする。 「そりゃ!」 『うっ!?』 抱え上げたティガれみりゃを、背中から地面に叩きつける萃香。 ドシーンと、土煙が舞い上がる。 『う~~~♪ おねぇーさんつよいどぉ♪』 地面に大の字になったまま、萃香を見上げるティガれみりゃ。 思い切り叩きつけたにもかかわらず、まだ笑顔でいるティガれみりゃを見て、 鈍さだけは大したものだと呆れる萃香。 萃香は、ティガれみりゃの上に馬乗りになり、 大の字に広げられたティガれみりゃの腕を両手で押さえつけて固定する。 『うぅ~~♪ おねぇーさんのえっちぃ~~♪』 「きゃー! あかちゃんたぢには、みぜられないどぉー!」 勝手に興奮するティガれみりゃと親れみりゃ。 それに対し、萃香は冷静にティガれみりゃの体を眺めて、吟味する。 こんなやつが本当に絶品珍味なのだろうか? だんだんと不安になってくる萃香。 ゆっくりが出没しはじめたのは最近のことなので、 鬼にしてもゆっくりに関する知識は殆ど持ちあわせていたなかった。 「うーん……いちおう味見してみようかな」 萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔に、そっと顔を近づける。 そして、舌をのばして、ほっぺたを舐め上げた。 『くしゅぐったぁーい♪』 照れるティガれみりゃ。 一方、萃香は口の中に、たしかに肉汁が広がっていくのを感じていた。 (へぇー! こいつの汗、肉汁なんだ!) 妙に感心した萃香は、引き続きティガれみりゃの顔を舐め回す。 最初は嬉し恥ずかし状態だったティガれみりゃだったが、 次第に嫌悪感をあらわにしだす。 『う~~~~、う~~~~』 レロレロレロレロレロレロ。 『うぁ、うぁぁ、うぁうぁうぁ~~~~』 なめ回されていくうちに、奇妙な感覚を覚えるティガれみりゃ。 肉まんの皮がふやけていくのと同時に、顔に適度に振動を与え続けられたことで、 なんともむずかゆい気持にさせられてしまっていた。 そして萃香は、とうとう一つの決断をする。 「う~~ん、思い切って食べてみるか」 肉汁はうまいし、これだけデカければちょっとくらいつまみ食いしても大丈夫だろう。 いや、むしろ宴会の幹事としてはツマミの味を確認しないわけにはいくまい。 萃香はそう己を納得させ、 口角を歪めて、牙をひからせる。 『う~~? れみりゃ、おねぇーさんにたべられちゃうどぉー♪』 顔を紅潮させ、 かぶりを振って、イヤイヤ♪とするティガれみりゃ。 だが、その顔は相変わらずの満面しもぶくれスマイルのままで、むしろ嬉しそうでさえある。 「さっすがティガれみりゃだどぉ♪ あんなにつよいおねぇーさんを、もぉーとりこにしちゃったどぉ♪」 親れみりゃも、何を勘違いしたか興奮気味。 変なところで耳年増なのか、2人のれみりゃは、萃香の「食べちゃう」発言を、 これからいっしょに「すっきりぃ~♪」しようという誘いに受け取ったらしい。 『れみりゃはじめてだからぁ~♪ やさしくしてねぇ~~ん♪』 どこで覚えたのか、恥じらいの台詞を口にするティガれみりゃ。 ちなみに、本当に「すっきり」するのが初めてかどうかは定かでない。 「はいはい、やさしくなっと」 萃香はティガれみりゃの勘違いを軽く受け流すと、 にぃーっと笑った後、徐々に口を開いていき、鬼の牙を煌めかせた。 次の瞬間。 ぱくり。 萃香の小さな(?)口が、 ティガれみりゃの下ぶくれ顔の端にかぶりつき、そのまま一部をえぐりとった。 『「う?」』 何が起こったかわからず、硬直するティガれみりゃと親れみりゃ。 構わずむしゃむしゃ租借し、モチモチとした皮と、上質な肉餡を舌の上で堪能する萃香。 口内にじゅわぁーと肉汁がひろがっていくのにつれて、萃香の顔が輝いていく。 「おっ、おいしぃー!」 パァーと輝く萃香の笑顔。 その笑顔と言葉で、超鈍感力の持ち主たるティガれみりゃも、ようやく事態に気付いた。 おそるおそる、視線を下に向けると、自慢のふくよかな顔の一部が、えぐれていた。 『いっ!』 認識した瞬間、痛みが一気に広がった。 『いだぃぃぃぃぃ!』 泣き出し、ジタバタと体を動かすティガれみりゃ。 だが、ティガれみりりゃの動きは、馬乗りになった萃香によって封じられ、 その場から逃げ出すことは出来ない。 『うぁぁぁぁぁっっ! うぁぁぁぁぁぁっっ!!』 ティガれみりゃは、唯一動かせる顔だけを左右に揺らし、わめき散らす。 『しゃくやぁー! はやくぎでぇぇ! ごぁいひどがいるぅぅぅぅっっ!!』 「ん~? 咲夜ならこないぞ。 今頃は山の上じゃないか?」 『うぞづくなどぉぉぉ! しゃくやはでみりゃが呼べばぎでぐれるどぉぉぉ! でみりゃはおぜうさまだからえらいんだどぉーー! そしたらおまえなんがぁっ!!』 「そりゃお前がアノ吸血鬼だったらそうかもしれないけどねぇ。お前は違うだろ、恐竜さん♪」 『うぞだどぉー! うぞだどぉーー! ぎゃおーーっ! ぎゃおーーーっ!!』 自分が紅魔館のお嬢様でないはずがない! れみりゃ種特有の絶対的矜持を揺るがされ、必死に抵抗するティガれみりゃ。 恐竜と言われて否定するつもりが、「ぎゃおー!」とやってしまうあたりが、 れみりゃ種の限界らしく、それはティガれみりゃといえど例外ではなかった。 一方、そんな苦しむティガれみりゃの姿を見た親れみりゃ。 当初は下ぶくれスマイルのままだった彼女も、 次第に冷や汗がうかびだし、顔が徐々に青くなり、いまではガクガクと小刻みに震えだしている。 親れみりゃは、ティガれみりゃを崇拝し、信じ切っていた。 その崇拝と信頼は、如何にティガれみりゃが劣勢に立たされても揺らぐことはなかった。 萃香に捕まれようと、持ち上げられようと、投げられようと。 ティガれみりゃにとっては何の問題もない。そう期待していた。 現に、ティガれみりゃは笑顔のまま立ち上がったではないか。 やっぱり凄い、きっと自分だったら最初に転んだ時に泣き出してしまっていただろう。 すごい、ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃとそっくりな自分も、きっといつかあんな風に……。 そう、思っていた。 だが、しかし。 今のティガれみりゃの姿は。 動きを封じられ、なすすべなく助けを呼ぶ光景は。 まるで、さきほどゲスまりさに食べられそうになった自分そっくりで……。 崇拝と信頼と憧れで栓をしていた、恐怖と不安がどっと湧き出てきて、 親れみりゃを混乱させる。 「うぁ、うぁ……」 笑顔は自然と消え、 目からは涙が流れ出す。 だめ! ティガれみりゃは負けちゃだめ! じゃないと! じゃないと! 私まで! 「ううううーっ! ティガでみりゃぁぁぁ!! だづんだどぉぉ!! がんばっでだどぉぉぉぉっっ!!!」 号泣し、ろれつの回らないまま叫び続ける親れみりゃ。 けれど、そんな親れみりゃの応援むなしく、 ティガれみりゃは、萃香に食べられ続ける。 『うあぁぁぁぁっっ!! うあぁぁぁぁぁっ! おねがぃぃぃぼぉうやべでぇぇぇぇっっ!!!』 耳を貸さず、萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔をパクパク食べ続ける。 「う~ん、こんなうまい肉まん初めてだよ♪」 「うっ!!」 "肉まん" その単語を聞いて、親れみりゃはビクッと体を硬直させる。 ちがう、ちがう、ちがう! れみりゃは、れみりゃは! 「ちがうどぉぉーーっ!! でみりゃはにぐまんじゃないどぉぉぉぉーーーっ!!」 まるで自分のことのように叫ぶ親れみりゃ。 だが、叫んだその刹那。 暴れるティガれみりゃから飛散した肉まんの小さな欠片が、 大口を開いた親れみりゃの口の中へスッポリと収まった。 「うっぎゃぁ!! ティガでみりゃのおかおぉぉ!!」 嫌悪し、吐き出そうとする親れみりゃ。 ほんの小さな破片とはいえ、崇拝対象の顔を口の中に入れてしまうなんて。 「うーっ! うーっ! ………ううっ!?」 吐き出そうと咳き込むその時、 親れみりゃは、誤ってティガれみりゃの欠片を噛んでしまった。 じゅわぁ~~~と口内に広がるアツアツの肉汁。 「う、うーっ!!?」 そのあまりの肉汁の美味しさに、 親れみりゃは反射的に、ティガれみりゃの欠片を租借しだす。 噛めば噛むほど味が染み出る肉餡の美味しさに、もはや罪悪感もなんのその、 親れみりゃは食べるのを止めることができなくなっていた。 ごっくん。 ティガれみりゃの欠片を堪能し、飲み込む親れみりゃ。 「う~♪ しあわせぇ~~だどぉ~~~♪ こんなにおいじぃにぐまんははじめてだどぉ~~~♪」 そして。 思わず、言ってしまった。 ぷっでぃんとも甲乙つけがたいその美味しさに、 親れみりゃは決して言ってはならないことを言ってしまったのだ。 そのことに、数秒後に気付き、 親れみりゃは震えが止まらなくなった。 ティガれみりゃ、食べちゃった。 とっても美味しかった。 美味しいなんだった? ぷっでぃん?おまんじゅう? ううん、ちがう。 おいしぃおいしぃにくまんさん。 あれ。 ティガれみりゃはおいしぃにくまん? それじゃ、れみりゃは? れみりゃはこーまかんの? おぜうさ? にく? れみりゃは……。 にくま。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」 親れみりゃの中で、決定的な何かが壊れた。 小さな体であげたその悲痛な叫びは、巨大なティガれみりゃと萃香がたてる音によってかき消されていった…。 数分後。 『た、たしゅげでぇぇ……』 既に下ぶくれ顔の三分の一近くを失ったティガれみりゃは、 ブクブクと泡を吹き、白目を向いて、ぴくぴくと体を痙攣させていた。 「……うっ、しまったな」 萃香はハタと我に返り、立ち上がる。 眼下で苦しむティガれみりゃを見つめて苦笑いする萃香。 「調子にのって食べ過ぎた。こんな食べ残しを土産にしちゃ悪いかな…」 とはいえ、この素晴らしい肉まんの味は、是非他の連中にも味わってもらいたいのだけど。 う~ん。と、しばし考える萃香。 すると。 「おや?」 ふと眼下の森をを見ると、そこには目の前でノビている恐竜そっくりな、小さいヤツがいるではないか。 その小さな恐竜は、逃げるでも戦うでもなく、ぼぉーとその場に突っ立ているように見えた。 「そういえばいたな。 あれって、おまえの子供?」 ティガれみりゃに話しかける萃香。 ティガれみりゃは、ずりずりと地面を這いつくばりながら萃香から逃げ出そうとしていた。 「なぁ、ちょっと!」 『は、はぃぃぃ!』 萃香に呼び止められたティガれみりゃは、 這うのを止め、両手で頭を抱えて、ブルブルと震え出す。 『う~~~~っ! う~~~~~~っ!』 やれやれと肩で息を吐く萃香。 この様子では聞くだけ無駄か。 「なぁ、お前…」 『ごめなざぃぃぃぃ!! あなだのかぢですぅぅぅぅう!!』 何を勘違いしたか、ティガれみりゃは萃香の方を向き、 へへぇー、へへぇーと、何度も両手をついて土下座を繰り返し始めた。 「お前、もういいよ。さっさとどっかへ行きなよ」 『は、はぃぃぃぃっ! ありがどぉぉございまずぅぅぅぅ!!』 ティガれみりゃは涙を流し、 そのままずりずりと地面を這い出す。 『うぅ~~~~~~、うぅ~~~~~』 痛くて、辛くて、悲しくて、悔しくて、恐くて、惨めで、 ただただ泣きながら、逃げ去っていくティガれみりゃ。 その後ろ姿を溜息で見送った後、 萃香は元の人間の少女大のサイズに戻り、 森で呆然と立つゆっくりゃザウルス……即ち、 先ほどティガれみりゃの欠片を食べてしまった親れみりゃの下へ降りる。 「あばっ、あぶあっ、あばばばばばばば……!」 親れみりゃの様子は、既に正常を失っていた。 目の焦点を失い、口から泡を吹き、足下に肉汁の水たまりを作って、 よれよれと体を左右に揺らし続けている。 「おい、おまえ!」 萃香が呼ぶと、親れみりゃは、反射的に体を強張らせる。 「はいぃぃっっ! なんでじょぉぉ!?」 じぃーと親れみりゃを眺める萃香。 やはり、先ほどの大きいヤツの子供なのだろうか? そんなことを考えつつ、口を開く。 「おまえも、あのデカイ奴みたいに食べられるんだよね?」 すると、親れみりゃは、 実にストレートな答えを返した。 「そうでずぅぅ! でびりゃばおいじぃにぐまんでずぅぅぅぅぅぅっっっっ!!」 口角から肉汁を飛ばしながら喋る親れみりゃ。 「にぐまんいっばいうむがらぁぁぁ! いじべないでぇぐだじゃいぃぃぃぃぃっっ!!!」 その顔は満面笑顔だが、笑ったままの目尻から大量の涙を流し続けている。 「ふーん、じゃ鬼らしくさらわせてもらおうかな」 よくよく考えれば、こいつ一体いればツマミの肉まんとしては充分すぎる量かもしれない。 そう考えた萃香は、しばらく親れみりゃを物色した後、 ひょいっと親れみりゃを抱え上げ、その場を後にした。 無機物のように抱え上げられた親れみりゃ。 移動中、その顔は常に笑顔であり、ずっと歌を口ずさみ続けていた。 「うぁ~~うぁ~~♪ あばばぁ~~♪ でびりゃばおいじぃ~にぐまんだどぉ~~~♪」 ……数時間後。 『ティ…ガ…ティガ…ティガ……』 息も絶え絶えに地面を這い続けるティガれみりゃ。 萃香に食べられた下ぶくれ顔は、既にかなりの部分が再生している。 だが、いくら表面的な体の傷がなおっても、 再生に栄養をまわしたぶん、体力の消耗は激しかった。 それに、深く心にえぐられた傷はそうそう治るものでもない。 『ティガ…れみ…りゃ……うぅ……』 少しでも気を紛らわせようと、弱々しく口を開くティガれみりゃ。 しかし、いくら歌を歌っても、 その気持は、痛みは、苦しみは、ちっとも晴れはしなかった。 おかしいな。 そうティガれみりゃは感じていた。 ついさっきまで、あんなに楽しく歌ったり踊ったりしていたのに。 あれ、そういえば、誰かといっしょにいたような? おかしいな、だれだっけ? とってもやさしくて、おうたもダンスもじょうずな子だったような。 思い出せないけど、きっとあの子は今頃たのしくおうたをうたっているんだろうな。 また、いっしょにおどりたい、な。 『うぅー…うぅー…うぁ…うぁ……』 森のはずれの湖のほとり。 そこでティガれみりゃは意識を失った。 『…………ZZZ』 それから、どれくらいの時間がたっただろうか? たまたま湖を訪れ休憩する、ゆっくりの一団がいた。 「むっ、むっきゅーーーーーっ!!??」 昏睡するティガれみりゃを見つけて叫んだのは、 かつてティガれみりゃによって、群れを壊滅させられた、あの胴体付きぱちゅりーだった……。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ5・さらばティガれみりゃ(予定)』 ============================ (あとがき) どうも、ティガれみりゃ第4回です。 今回は、『ティガれみりゃ3』から直接続くエピソードになります。 どうにも肉体的な虐め描写は苦手なのですが、 苦手ゆえに、敢えてこの前後編で挑戦してみました。 如何だったでしょうか? ……それにしても、ただの一発ネタのはずのティガれみりゃも、 随分書いた気がします。とりあえず次回で一区切りつける……予定です。 byティガれみりゃの人 (これって自分で名乗るものなんでしょうか?) ============================ このSSに感想を付ける
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特徴 基本情報 EQUIPMENTS 基礎能力値 バーストタイプ アクション 登録タグ 特徴 カラミティの火力は最強なんだよ! 形式番号GAT-X131。大西洋連邦が開発した第二期GATシリーズの内の一機。バスターの流れを組んだ、白兵戦用武装を一切持たない砲戦用MS。だが、前進機のコンセプトであった「迎撃・狙撃」といった緻密さからは離れ、高火力で有無を言わさず押し切る広域殲滅を目的としている。 その大火力を持って前線のレイダー・フォビドゥンを支援するのが主な役目。その特性上、指揮官機としての役割も兼ねている。しかし火力に特化した分機動力が犠牲になっており、大型のスラスターにより水上のホバー走行こそ可能なものの動きはかなり鈍重。(*1) 劇中ではオーブ解放作戦で他の三馬鹿機と共に登場、その余りある火力でオーブ軍の戦艦やM1アストレイを多数撃破する。しかし途中乱入してきたフリーダム・ジャスティスまで仕留める事はできず、さらにパイロットの薬切れもあって撤退。後に宇宙に上がった際も機体性能を活かしてザフトの守備部隊相手に無双しまくった。(*2) 原作ストーリー上では、脇役の敵役。その為か、ワンオフ機だがN4C4機として仕上げられている。バスター同様に近接武装が全く無いので致し方ないのだが、ホバリングでうっすら浮かびユラユラと左右に揺れながらビームを撒き散らしていくN攻撃がとても使いづらい。 C攻撃の性能自体は悪くないが、このN攻撃のモーションの所為で非常に当て辛くなってしまっている。また設定に反して殲滅力が低い。 第二期GATシリーズでは唯一自律飛行機能を持たないという設定にもかかわらず、やたら浮きたがる。 地上SPが威力・殲滅力共に高いのでこれをメインに使いたい。上記の通りC攻撃の殲滅力が悪い為、「集中」はほぼ必須。幸いオルガは中盤で習得するので、装備は忘れないように気を付けたい。 JSPも性能は良さげ。旋回性能の悪さがネックだが、それ以外の性能はN4C4にしては割と良い。 とにかくいかにSPゲージを貯めるかが勝負。本作で追加されたCSをどんどん使っていきどんどんSPゲージを貯めよう。ゲージが貯まりきれば後はしばらく俺のターンが可能になるので、オルガのバーストタイプも最大限活用しよう。 基本情報 登場作品 機動戦士ガンダムSEED メインパイロット オルガ・サブナック EQUIPMENTS 武装 対応技 ケーファー・ツヴァイ N1,N2,C1~C3,SP,D1~D4 トーデスブロック N4,C3,D5 シュラーク N3,SP,JSP,DC スキュラ C4,SP,JSP,CS 基礎能力値 項目 数値 カンスト数 FIGHT 120 2 SHOT 180 1 DEFENSE 150 2 ARMOR 4000 2 MOBILITY 300 2 THRUSTER 400 2 ※カンスト不可能(右は必要スロット数) バーストタイプ トランスフェイズ装甲 防御力が上昇し、怯まなくなる アクション 攻撃アクション 行動 属性 範囲 備考 通常攻撃 N1 ケーファー・ツヴァイ 射撃 前方扇状 左→右へ薙ぎ払う様に発射 N2 右→左へ薙ぎ払う様に発射 N3 シュラーク 前方長距離 背部ビーム砲のシュラークを発射。実はガード崩し付き N4 トーデスブロック 前方 右手のバズーカ砲を発射。発生が遅く当たりにくい チャージ攻撃 C1 シールドビーム砲 射撃 前方 左手のビーム砲を放つ。5連射可能 C2 シールド突き上げ 格闘 前方短範囲 左手のシールド部分で斜め上に突き上げる。攻撃範囲が狭く当てにくいため、主にタイマン用 C3 刺突→シールドビーム砲→トーデスブロック 格闘→射撃 前方短範囲→前方長射程 シールド部分で目の前を突く。ボタンホールドか追加入力でシールドのビーム砲を放ち、さらに追加入力で右手のバズーカ砲を発射する。全体的に発生の遅いこの機体のチャージ攻撃の主力。この攻撃を起点にして、SPゲージを回収しよう C4 スキュラ 射撃 前方中射程 前方に射程の短い照射ビームを放つ。照射中に方向キーで向きを変更可能これ自体の性能は悪くないのだが、直前のN3で敵を吹っ飛ばしてしまうため非常に当たりにくい。エース機相手にはパワーダウン時でもなければまともにヒットすらしない チャージショット CS スキュラ 前方 胸部から小さめのビームを放つ。C4に比べて大きさに劣るが射程に優れる SP攻撃 SP 一斉掃射 射撃 前方広範囲長射程 前方ほぼ180度にケーファー・ツヴァイとシュラークを乱射し、、〆にスキュラで右から左へ薙ぎ払う。N4C4とは思えない威力と殲滅力のSPであり、敵エースに密着して放てばすさまじい威力を誇るこの機体の生命線。攻撃範囲が広くさらに間断無く攻撃するため、複数のエース機にも当たりやすい。SPゲージは基本これに回そう JSP 墜としてやる…!! 前方 胸部と背部のビームを同時に発射。N4C4機の照射ビームとしては意外と威力があり、性能は悪くない。受身を取られないのもグッド。しかし地上SPがN4C4としては破格の性能なのでどうにも地味さが否めない。どちらかと言えば対エース用 ダッシュ攻撃 D1 シールド叩き付け 格闘 目の前 シールド部分で右から左へ殴る。超リーチ短い D2 シールド部分で左から右へ殴る。こちらも超短い D3 D1と同じ D4 D2と同じ D5 トーデスブロック 射撃 バズーカ砲を放つ。D攻撃の中ではリーチは長め DC シュラーク 前方長射程 背部ビーム砲を斜めに2発放つ。射程は長いがV字状に飛んでいってしまう為、離れすぎると殲滅力が下がる 登録タグ オルガ・サブナック カラミティガンダム カンスト不可能 トランスフェイズ装甲 機動戦士ガンダムSEED 種
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ティガれみりゃ その2 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ』の続きになります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 虐め……というのとは少し違うかもしれません。 すみません、まだ続きます。 文字数設定の関係上、改行が変な箇所があるかもしれません。 (あまりにも読みづらいようでしたら、修正版をupします) 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 ======================== 2、異常震域 月夜の下に広がる森。 小動物達が俄にざわめきだし、 彼等がさきほどまで寝床にしていた木々が、バキバキと折れていく。 その原因は、全て一体の巨大生物によるものだった。 よったよった、どったどった。 よったよった、どったどった。 短い足で、不器用なステップを踏みながら、 その巨体とは裏腹に、実にゆっくり進んでいく巨大生物。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 その巨大生物、通称・ティガれみりゃは、 歌いながら楽しそうに夜の森を往く。 見た目は、中綿たっぷりの、だぶだぶくたくたの恐竜型ぬいぐるみ。 恐竜の口の部分がぱっくり開き、そこにれみりゃ種特有の、憎たらしげな下ぶくれスマイルが覗いている。 だが、その滑稽な見た目に反して、その体は尻尾をあわせれば20メートルにも届かんとする巨大さを誇る。 短い手足をバタバタさせて、「うぅーうぅーうぁうぁ♪」とやるたびに、足下の生物達は生命の危険にさらされる。 それゆえ、数多くの命が暮らすこの森にあっても、 意図的にティガれみりゃに近づこうとする者は、まずいない。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪ とぉ~ってもぷりちぃ~~ティガれみりゃ~~♪』 本人はといえば、そんなことは気にも留めず、相変わらずの御機嫌ノリノリで森を進む。 いっそさっさと通過するなら、 動物達や森で暮らす他のゆっくり達にとっても、まだマシだった。 けれど、ティガれみりゃにそんな空気を読む力があるはずもなく、 よったよった、えっちらおっちら。木を倒し、ゆっくりを踏みつけ、動物達を脅かして歩いていく。 「ゆゆゆっ! ティガれみりゃはゆっくりしないで、どっかへいってね!」 「ゆぅ~~! おかーしゃん、こわいよぉぉっ!」 ティガれみりゃの足下、逃げ遅れたれいむの親子が、木々の影に隠れていた。 こんな恐い場所からはさっさと逃げ出したかったが、 ティガれみりゃが歩く度に震動が起こり、なぎ倒された木々が倒れてくるせいで、 おちおち移動することもできずにいた。 「おかーしゃーん! おかーしゃーーん!」 「だ、だいじょうだよ! あかちゃんのことは、れいむが守るよ!」 身を寄せ合い、震える親子。 そんな親子の願いが通じたのか、 ティガれみりゃは親子を踏みつけることなく、 そのすぐ横を通過して、森の奥へと向かっていく。 「ゆぅ~~~? なんとか助かったよぉ~~!?」 「やったねぇ~~! おかーしゃーん!」 顔を見合わせ喜びあう、れいむの親子。 だが、次の瞬間。 どっすん! 「ゆべぇぇぇっっ!」 「ゆぐぎゃぁぁぁ!」 ティガれみりゃの尻尾が振り下ろされ、れいむの親子はぺちゃんこに潰される。 残されたのは、地面に貼り付けられた、あんこの染みだけだった。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~~♪』 もちろん、ティガれみりゃが一々そんなことに気付くはずもない。 ティガれみりゃは、その後も歩き続け、30分後目的地の前で足を止めた。 『う~~、ついたどぉ♪ さっすが、れみりゃ! すらっとのびたあしは、あるくのもはぁやいどぉ~♪』 自分の短足・鈍足を棚に上げ、自画自賛するれみりゃ。 ちなみに、ここまで歩いてきた平均歩行速度は、その巨体からすれば驚くほど遅い時速4kmしかない。 うぁうぁダンスをしながらの歩行とはいえ、この遅さこそ、この突然変異種が"ゆっくり"であることの証ともいえる。 『う~♪ みんなぁ~まっててねぇ~♪』 猫なで声をあげるティガれみりゃ。 ティガれみりゃの目の前は崖になっており、その中の一角に沢山の岩が積み上げられていた。 岩の奥には巨大な洞穴が広がっており、そこがティガれみりゃの巣穴となっていた。 "こーまかんのあるじは、留守のあいだのとじまりもかんぺきだどぉー♪" ティガれみりゃはそう言って、洞穴の入り口に岩を積み上げ、栓をしていたのだ。 『うー、岩はじゃまだどぉ! ぽいするのぽーい♪』 言うや否や、ひょいひょいと岩を持ち上げ、ぽいぽい投げ捨てていくティガれみりゃ。 その岩を積み上げたのが自分自身であることは、既に忘れてしまっているらしい。 『うー♪ あいたどぉ♪』 積み上げられた岩のバリケードは瓦解し、その先に大きな洞穴が姿をみせる。 長年をかけて山の地下水が空けた空洞は、ティガれみりゃが余裕で入れるほどの大きさだ。 『れでぃ~は、しっかりかぎをしめるどぉ♪』 洞穴の中に入ったティガれみりゃは、再び岩を積み上げ、洞穴の入口に栓をしていく。 『うっ? おかしぃーどぉ、岩がたりないどぉー?』 手近な岩を全て積み上げても、洞穴の入り口はまだ半分ほどしか塞がれていなかった。 ついさっき、ティガれみりゃ自身が岩を「ぽぉ~い♪」してしまったためだ。 『う~~! だれか岩をもってきてぇ~~!』 叫ぶが、当然そんな誰かがいるわけもない。 『うー・・・』 ティガれみりゃは、岩をあきらめ、洞穴の奥へと歩を進める。 すると、そこにはティガれみりゃの帰りを"待っていなかった"たくさんのゆっくり達がいた。 「「「うーっ!! ゆっくりしねっ!」」」 『う~♪ ふりゃ~ん、ただいまだどぉ~♪』 ティガれみりゃが満面の笑顔を浮かべた先、 そこには、いるはいるは、胴体付き・無しあわせて100体近いゆっくりフランたちがいた。 「「「しねっ! ふらん達をとじこめるティガはゆっくりしねっ!」」」 笑顔を向けるティガれみりゃに対して、ゆっくりフラン達は明確な敵意を露わにする。 全員が中空に舞い上がり、臨戦態勢をとりながらティガれみりゃを睨み付けている。 『うっう~♪ そんないじわる言っちゃダメなんだどぉ~♪』 その敵意をまるで理解していないのか、 ティガれみりゃは、よったよったとフラン達の下へ近づいていく。 だが、フラン達の集団は、すぅーと静かに移動し、ティガれみりゃが近づいたぶんだけ距離をとる。 『うぅ~~?』 不思議そうに顔を傾けるティガれみりゃ。 額に少し汗を浮かべつつ、今度はお気に入りのフレーズとポーズを決める。 『ぎゃお~♪ いっしょにあそんでくれないと、た~べちゃうぞぉ~♪』 バッチリだ。 ティガれみりゃは自分に惚れ惚れした。 こんなにもかっこよくて、ぷりちぃ~な自分の姿を見せられては、 照れ屋さんなフラン達もメロメロになって、自分に寄ってきてくれるにちがいない。 手を大きく広げて、いつでもフラン達を受け止められるように準備するティガれみりゃ。 ……だが。 「「「…………」」」 ゆっくりフラン達は微動だにせず、軽蔑するような冷たい視線をティガれみりゃに送るだけだった。 『うぅ~~~~……』 ティガれみりゃは困ってしまった。 そして、なんだか鼻の奥が少し熱くなっているのを感じた。 『うー♪ ふりゃーん♪』 すすすっ。 『まつんだどぉ~♪』 すすすっ。 『うっう~うぁうぁ~♪』 すすすっ。 ティガれみりゃは何度となく、フラン達とのスキンシップを試みようとアプローチを繰り返す。 しかし、フラン達は、そんなティガれみりゃに敵意だけを向けて、空中を静かに逃げ回るだけだった。 『うぅぅぅぅ……。なんで、れみりゃをむしするんだどぉ……』 目の端にたまる涙が流れ出さないよう、鼻の上に力を込めてこらえるティガれみりゃ。 その瞬間、ティガれみりゃは大事なことを思い出し、ぱぁーっと顔を輝かせる。 『うー! そうだどぉ! 忘れるところだったどぉ!』 ティガれみりゃはゴソゴソとポケットに手をつっこみ、一本の枯れ木を取り出して掲げた。 『うっうー♪ れみりゃとくせいのおだんご~♪ とぉーってもおいしぃどぉー♪』 ティガれみりゃが掲げたもの。 それは、ちょうど昨晩、ティガれみりゃが山間の窪地に築かれたゆっくり達の集落を遅い、 ゆっくり達を枯れ木に突き刺して作った、れみりゃ印の"とくせいゆっくりだんご"だった。 きっとフラン達はおなかが空いていて、それで遊ぶのを嫌がっているに違いない。 そう結論づけたティガれみりゃは、そのゆっくりだんごをフラン達に向ける。 「「「…………」」」 しかし、フラン達は何の反応も示さなかった。 それもそのはず。 本来、生粋の捕食種であるフランは、生きた獲物を捕らえ、嬲り、そして圧倒的な力を誇示しながら食すのだ。 野生の動物がそうであるように、誇り高き捕食者は、生きた獲物にしか興味を示さない。 死んだ獲物を食べるなど、食べ残しで生をなすハイエナか、意地汚い被捕食種ゆっくりくらいのものだ。 少なくとも、このゆっくりフラン達は、その矜持を忘れてはいなかった。 『うぅ? どうしたんだどぉ? おいしぃおかしだどぉ?』 ちっとも興味を示さないフランに、戸惑うティガれみりゃ。 『う~! たべないと、た~べちゃうぞ~!』 おかしなことを口走りつつ、ティガれみりゃは無理矢理ゆっくりだんごをフラン達に近づける。 けれど、フランはゆっくりだんごを食べることはなく、空中からティガれみりゃを睨むだけだった。 「うぅー……どぉーしていうこときいてくれないんだどぉー……」 どっすん! ティガれみりゃは目尻に涙を浮かべながら、地面に座り込む。 その刹那。 何匹からのフランが、この時を待っていたかの如く、 急にスピードを上げて飛行を開始した。 目指すは、この洞穴の出口! このフラン達は、空腹にも耐えながら、 ティガれみりゃに隙ができるこのタイミングを狙っていた。 「「うーっ!!」」 赤い弾丸となって、洞穴の暗闇を裂くフラン達。 『うーっ!?』 遅れながらも、数匹のフランが脱走しようとしていることに気付くティガれみりゃ。 しかし、いくら巨大なティガれみりゃといえ、敏捷性は小型のゆっくりフラン達の方が上。 ゆっくりフラン達の脱出は成功するかに思えた。 『うーっ!! 逃げちゃだめぇーっ!!!』 ティガれみりゃは、もっていたゆっくりだんご……もとい立ち枯れた木を、 いままさに洞穴の外へ出ようとしていたフラン達に投げつけた。 「「ううーっ!」」 いきおいよく飛んでいった木は、見事フランに命中する。 そして、尖った枝はフラン達に突き刺さり、彼女達を"ゆっくりだんご"の一つにしてしまった。 「「ううっ!!??」」 その光景を見て驚く、他のゆっくりフラン達。 彼女達は、今回の脱出計画がうまくいき次第、同様の手でこの洞穴から抜け出そうと考えていた。 『だぁーめぇぇぇ! ふりゃんはれみりゃとあそぶのぉぉっ!!』 洞穴の中にティガれみりゃの叫びが響き渡る。 『う~~~! 逃げちゃ、めぇ~~なの! はやくもどってくるのぉ!』 ティガれみりゃは、ゆっくりだんごと化したフラン達へ呼びかける。 「う、うぅぅぅぅ……」 「ゆ、ゆっぐり、じねぇぇぇ……」 他ならぬティガれみりゃの手によって、ゆっくりだんごとなったフラン達は、 当然動くこともできず、地獄の苦しみを味わっていた。 極めて高い生命力と再生力を持つゆっくりフランであったが、 数日前にこの洞穴に連れ込まれてからといたものの、食べたのは最初から洞穴内に住んでいたゆっくりや、小動物だけ。 ろくな食事もとらぬまま体を貫かれたフラン達は、本来の再生力も発揮できず、間もなく息を引き取った。 『う~~? ふりゃ~~ん?』 フラン達の様子がおかしいことに、ようやく気付いたティガれみりゃ。 が、時すでに遅く。ゆっくりだんごとなったフランは、二度とティガれみりゃの声に反応することはなかった。 『うぁぁぁぁぁっ! なぁんでだどぉぉぉっっ!?』 数匹とはいえ、フランが死んでしまったことを知り、 ティガれみりゃはこらえていたものを一気に噴出させる。 『うわぁぁぁぁぁぁん!!』 その鳴き声は凄まじく、洞穴を反響して振るわせる。 『しゃくやぁー! しゃくやはなにしてるんだぉー! ふりゃんがぁーーーっ!!』 来るはずもない、遺伝子に刻み込まれた従者の名を連呼するティガれみりゃ。 ドタンと大の字に倒れ込み、仰向けのまま手足をバタバタさせる。 『ひっく、ひっく、ひっく……うぅー…ふりゃーん……』 嗚咽を続けるティガれみりゃ。 『うぅ……うぅ……』 ティガれみりゃの涙は本物であった。 ティガれみりゃには、"ゆっくりフランを自分の巣に閉じこめて愛でようとする"習性があるのだ。 ゆっくりフラン達からすればたまったものではないが、 ティガれみりゃからすれば良かれと思ってやっていることだった。 『……うぅ……うぅ?』 ひっくひっくと肩で泣くティガれみりゃ。 やがて、涙もかれてくると、今度は眉根をへの字にしかめさせた。 『うぅー……泣いたら、おなかがへったどぉー♪』 今までの涙がウソのよう。 すっかりいつも通りの下ぶくれスマイルを作って、自分のお腹具合を心配しだすティガれみりゃ。 れみりゃ種……ひいてはゆっくり全体に見られるこの思考の切り替え・責任転嫁は、 あるいは"辛いことはさっさと忘れる"ことでゆっくりしようという、ゆっくり達なりの知恵なのかもしれない。 『うっうー♪ 今日はひさしぶりにぷっでぃーんが食べたいどぉー♪』 そう言うと、れみりゃは自らの体を起こそうとする。 起こそうとして……違和感を覚える? 『う~、はやくぷっでぃん食べにいくどぉ♪』 せーの! 体を起こそうとするティガれみりゃ。 『う~♪』 よいしょ! 『うーーっ!』 こらしょ! 『うーーっ! うーーーっ!!』 ティガれみりゃは何度も上半身を起こそうと試みる。 しかし、起きあがれるのはせいぜい頭部のみで、 筋肉のついてないお腹はすぐにプルプル震えだし、力尽きてしまう。 ずてーん! 体を起こすことができず、ティガれみりゃは後頭部を地面にぶつける。 『ぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~っ』 後頭部の痛みに、ティガれみりゃは鼻の上のあたりを真っ赤にしながら、声にならない嗚咽をもらす。 その後も何度か起きあがろうとするが、結果は同じだった。 『うわぁぁぁぁん! 起きられないどぉーーーっ!』 泣き出すティガれみりゃ。 ゆっくりゃザウルスにも見られる傾向であるが、 ティガれみりゃもまた、仰向けに倒れてしまうと中々立ち上がることができないのだ。 『しゃくやぁぁぁ! はやくおこしてくれないと、なーいちゃうぞぉーー!』 既に泣いてるって! 洞穴に残されたゆっくりフラン達が、心の中で一斉に突っ込む。 そして、捕食種の本能がそうさせるのか、起きあがれないティガれみりゃを見ると、 ゆっくりフラン達は一斉にティガれみりゃへの攻撃を始めた。 今、一斉攻撃をすればティガれみりゃを倒せると判断したのだ。 「うぅーっ!」 「ゆっくりしねっ!」 「ティガれみりゃはしねっ!」 「ゆっくりしないでしねぇぇ!」 「しねしねしねしねぇぇぇーーっ!」 ゆっくりフラン達の怒濤の攻撃。 噛みつき、体当たりし、にくまんの顔に拳を打ち込み、 レーヴァティンと呼ばれる突起物をガシガシ叩きつける。 これだけの集中攻撃を受ければ、たとえドス種であってもひとたまりもないだろう。 ゆえに、経験したことの無い脅威に対して、本能が誤った判断を下したとしても責めることはできない。 『うぅぅ~~~? ……ふりゃんたち、れみりゃをなぐさめてくれるのぉ?』 フラン達の攻撃を受ければ受けるほど、ティガれみりゃは徐々に泣きやんでいく。 ティガれみりゃに、ふらん達の攻撃は効いていなかった。 それどころか。 『う~~♪ くしゅぐったいどぉ~~♪』 とうとう下ぶくれスマイルを取り戻し、きゃっきゃと喜びはじめてしまった。 「「「うぅーーっ!?」」」 自慢の攻撃が全く効いておらず、流石に驚愕をあらわにする、ゆっくりフラン達。 もし、ティガれみりゃが起きられずに泣いている間、ティガれみりゃに構わず逃げ出していたらなら、 今頃このフラン達は気持の良い満月の夜空を謳歌していたことだろう。 しかし、もう遅い。 「しねっ!しねっ!」 『う~~~?』 ティガれみりゃのにくまん顔に馬乗りになり、拳を打ち続けるゆっくりフラン。 その姿を見たティガれみりゃは、肉まん脳をフル回転させる。 『うー! ひらいめいたどぉー!』 ティガれみりゃは、うんしょ、うんしょと、 苦労しながら体を回転させ、徐々に俯せの姿勢へとなっていく。 その間、ティガれみりゃの体にまとわりついていたフラン達は振り落とされ、 離陸に失敗したものは、そのままティガれみりゃの体に押しつぶされてしまった。 俯せになったティガれみりゃは、両手を使い、上半身を起こす。 と同時に、膝を立て、両手と組み合わせることで立ち上がっていく。 『う~~~~! やったどぉ~~~~!』 バンザーイ!と両手を大きく広げて、立てたことをアピールするティガれみりゃ。 『すっごいどぉー! れみりゃはやっぱり天才だどぉ♪』 「「うううううう……」」 喜びを爆発させるティガれみりゃに対し、 フラン達はせっかくのチャンスを無駄にしてしまったことを悔しがる。 『うっう~うぁうぁ♪ うっう~うぁうぁ♪』 どったばったと手足を動かし、洞穴の中で踊り出すティガれみりゃ。 ティガれみりゃが踊る度に、洞穴が揺れ、天井からは希に小さな石つぶが落ちてくる。 身の危険を感じ、洞穴の奥で一カ所にかたまるゆっくりフラン達。 『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~♪』 ご自慢のダンスを踊りきり、最高にハイになるティガれみりゃ。 やっぱり自分ってば凄い! かわいいし! かっこいい! 頭もいい! こうまかんのおぜうさまにふさわしい、すてきなれでぃーだ! ティガれみりゃは御機嫌なまま、洞穴のすみっこに固まるフラン達に向き直る。 さぁ、こんどは何をして遊ぼう? そんなことをティガれみりゃが考えた時だった! 「……ぅー」 『うっ?』 ティガれみりゃは、頭の奥の方で、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。 「……ぅーぅー」 まただ。 やっぱり誰かが自分のことを呼んでいる。 だって、あたまのなかで声がするんだもん。 そう結論づけたティガれみりゃは、周囲をきょろきょろ見回したのち、 どったどったと慌てて洞穴の外へと出て行く。 「…う?」 残されたフラン達は、その様子を不思議そうに眺めていた。 洞穴の外。 ティガれみりゃはそらを見上げて目をこらす。 『うー……、うー……、うーっ♪』 空を飛ぶあるものを見つけ、歓声をあげるティガれみりゃ。 空を見上げる視線の先では、うーぱっくの親子が満月の夜空を横断していた。 『う~~♪ まっでぇぇ~~♪』 うーぱっく達を見つけたティガれみりゃは、 そのままうーぱっく達の後を追って歩いていく。 『う~♪ まつんだどぉ~♪ れみりゃもおそらをとぶんだどぉ~♪』 よったよった、どったどった。 よったよった、どったどった。 ティガれみりゃは楽しそうに、うーぱっく達の後を追う。 空を飛ぶうーっぱくと、地面をどすどす歩くティガれみりゃでは、どんどん間の距離が離れていってしまう。 現に、すでにうーぱっく達はれみりゃの視界から消えていた。 しかし、れみりゃには不思議な確信があった。 このままこちらへ歩いていけばよいのだと。 「ぅーぅー」 「ぅーぅー」 「ぅーぅー」 だって、頭の中にあのうーぱっく達の声が聞こえてくるのだから。 そして、この声の先には、だいたい美味しそうなおまんじゅう達がいっぱいいるのだ。 『う~~♪ まっててねぇ~ふりゃ~ん♪』 笑顔で闊歩するティガれみりゃ。 ふと空を見上げると、おしそうな真ん丸お月様が輝いていた。 まるでおまんじゅうみたい。 でも、色はぷっでぃーんに近いかな? そんなことを考えながらティガれみりゃは木々を押し倒していく。 こんなにもお月様が美味しそうだから、歌っちゃおう♪ ティガれみりゃは短くずんぐりむっくりした手足を、うぁうぁと動かす。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 一方、その頃。 洞穴に残されたフラン達は、ティガれみりゃがいなことを確認して、月夜へ飛翔を開始していた。 余談だが、その後しばらく、ゆっくりフランによる必要以上のれみりゃ種への虐待が続いたという……。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ3・(タイトル未定)』 ============================ (あとがき) byティガれみりゃの人 ……とか名乗っておいた方が良いのでしょうか? どうも、前回『ティガれみりゃ』を書いた者ですm(_ _)m とりあえず今回が2回目です。 1回目を書いた時点で、今回の範囲まではほぼ終わっていたので、 連日になってしまいましたが、upさせていただきました。 (少しでも楽しんでいただければ幸いです) その3は……しばらくお時間をいただくことになるかもしれません(汗 なお、作中のティガれみりゃとうーぱっくの関係ですが、 某有名怪獣映画のとある設定のオマージュにだったりしますw ============================ このSSに感想を付ける
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【5月14(金)15(土)】 予約の方は曜日と希望NMを記入して下さい。 希望曜日の前にチェックを入れて、書き込むとツリー形式になりますので、 希望該当曜日の前にある○にチェックを入れてから予約書き込みお願いします。 ★名前の前の○にチェックが入ったまま書き込みをすると、新しい記事が作成されてしまいますのでご注意! ★基本的に予約は当日20 45までにお願いします。通常予約か使用予約かできるだけ明確に! ★参加できない場合でも連絡事項等LSメッセの確認お願いします。 @wikiサイドでプロバ規制がかかって書き込みが出来ないメンバーは掲示板に各日予約記事を作成しますのでそちらにお願いします。書き込み規制のないメンバーはこちらに書き込みよろしくです 金曜予約希望 - 5月14日 マジュかラミア希望 (5/8参加) ☆繰越- Lucid 2010-05-14 19 58 23 ギギルン希望(5/7参加) - Gen 2010-05-14 20 20 11 土曜予約希望 - 5月15日 フラン希望。遅れるかも(5/14) - kidjr 2010-05-15 17 16 35 イリズイマ希望(5/8参加) - Esmelada 2010-05-15 17 17 57 アナンタボガ希望(5/8参加) - silius 2010-05-15 18 58 21 アームドギア希望(05/14参加) - Ahoiwa 2010-05-15 19 28 00 チガー希望(5/1参加分) - Bellno 2010-05-15 19 50 21 ゴトージャ希望 5/8 - Ien 2010-05-15 20 06 49 チガー希望(5/14参加) - Shock 2010-05-15 20 22 15 名前 ★予約時点で21時集合に遅れることが分かっている場合は、その旨記入よろしくです。 STEP1 STEP2 STEP3 7(金) イリズ・チゴ 8(土) チゴ・スラ ドラ 14(金) キキルン 15(土) チゴ2 フラン・イリズ・ドラ ギア・ゴト 21(金) ウルガル2 22(土) ウルガル ブー3・ゴト3 28(金) オブ 29(土) チゴ ウルガル ブー・ノス・マジェ・ラミア2 【ステップ4トリガー収集状況】 ティンニン(マムージャ) ティガー(死者) サーラメーヤ(トロール) 保有 Sei(Hakugin/Bert/Kyarasu) Ahoiwa(Nori/Kuratosu) (/Tahha/Kuratosu/Kidjr) -
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ティガれみりゃ その2 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ』の続きになります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 虐め……というのとは少し違うかもしれません。 すみません、まだ続きます。 文字数設定の関係上、改行が変な箇所があるかもしれません。 (あまりにも読みづらいようでしたら、修正版をupします) 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 ======================== 2、異常震域 月夜の下に広がる森。 小動物達が俄にざわめきだし、 彼等がさきほどまで寝床にしていた木々が、バキバキと折れていく。 その原因は、全て一体の巨大生物によるものだった。 よったよった、どったどった。 よったよった、どったどった。 短い足で、不器用なステップを踏みながら、 その巨体とは裏腹に、実にゆっくり進んでいく巨大生物。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 その巨大生物、通称・ティガれみりゃは、 歌いながら楽しそうに夜の森を往く。 見た目は、中綿たっぷりの、だぶだぶくたくたの恐竜型ぬいぐるみ。 恐竜の口の部分がぱっくり開き、そこにれみりゃ種特有の、憎たらしげな下ぶくれスマイルが覗いている。 だが、その滑稽な見た目に反して、その体は尻尾をあわせれば20メートルにも届かんとする巨大さを誇る。 短い手足をバタバタさせて、「うぅーうぅーうぁうぁ♪」とやるたびに、足下の生物達は生命の危険にさらされる。 それゆえ、数多くの命が暮らすこの森にあっても、 意図的にティガれみりゃに近づこうとする者は、まずいない。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪ とぉ~ってもぷりちぃ~~ティガれみりゃ~~♪』 本人はといえば、そんなことは気にも留めず、相変わらずの御機嫌ノリノリで森を進む。 いっそさっさと通過するなら、 動物達や森で暮らす他のゆっくり達にとっても、まだマシだった。 けれど、ティガれみりゃにそんな空気を読む力があるはずもなく、 よったよった、えっちらおっちら。木を倒し、ゆっくりを踏みつけ、動物達を脅かして歩いていく。 「ゆゆゆっ! ティガれみりゃはゆっくりしないで、どっかへいってね!」 「ゆぅ~~! おかーしゃん、こわいよぉぉっ!」 ティガれみりゃの足下、逃げ遅れたれいむの親子が、木々の影に隠れていた。 こんな恐い場所からはさっさと逃げ出したかったが、 ティガれみりゃが歩く度に震動が起こり、なぎ倒された木々が倒れてくるせいで、 おちおち移動することもできずにいた。 「おかーしゃーん! おかーしゃーーん!」 「だ、だいじょうだよ! あかちゃんのことは、れいむが守るよ!」 身を寄せ合い、震える親子。 そんな親子の願いが通じたのか、 ティガれみりゃは親子を踏みつけることなく、 そのすぐ横を通過して、森の奥へと向かっていく。 「ゆぅ~~~? なんとか助かったよぉ~~!?」 「やったねぇ~~! おかーしゃーん!」 顔を見合わせ喜びあう、れいむの親子。 だが、次の瞬間。 どっすん! 「ゆべぇぇぇっっ!」 「ゆぐぎゃぁぁぁ!」 ティガれみりゃの尻尾が振り下ろされ、れいむの親子はぺちゃんこに潰される。 残されたのは、地面に貼り付けられた、あんこの染みだけだった。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~~♪』 もちろん、ティガれみりゃが一々そんなことに気付くはずもない。 ティガれみりゃは、その後も歩き続け、30分後目的地の前で足を止めた。 『う~~、ついたどぉ♪ さっすが、れみりゃ! すらっとのびたあしは、あるくのもはぁやいどぉ~♪』 自分の短足・鈍足を棚に上げ、自画自賛するれみりゃ。 ちなみに、ここまで歩いてきた平均歩行速度は、その巨体からすれば驚くほど遅い時速4kmしかない。 うぁうぁダンスをしながらの歩行とはいえ、この遅さこそ、この突然変異種が"ゆっくり"であることの証ともいえる。 『う~♪ みんなぁ~まっててねぇ~♪』 猫なで声をあげるティガれみりゃ。 ティガれみりゃの目の前は崖になっており、その中の一角に沢山の岩が積み上げられていた。 岩の奥には巨大な洞穴が広がっており、そこがティガれみりゃの巣穴となっていた。 "こーまかんのあるじは、留守のあいだのとじまりもかんぺきだどぉー♪" ティガれみりゃはそう言って、洞穴の入り口に岩を積み上げ、栓をしていたのだ。 『うー、岩はじゃまだどぉ! ぽいするのぽーい♪』 言うや否や、ひょいひょいと岩を持ち上げ、ぽいぽい投げ捨てていくティガれみりゃ。 その岩を積み上げたのが自分自身であることは、既に忘れてしまっているらしい。 『うー♪ あいたどぉ♪』 積み上げられた岩のバリケードは瓦解し、その先に大きな洞穴が姿をみせる。 長年をかけて山の地下水が空けた空洞は、ティガれみりゃが余裕で入れるほどの大きさだ。 『れでぃ~は、しっかりかぎをしめるどぉ♪』 洞穴の中に入ったティガれみりゃは、再び岩を積み上げ、洞穴の入口に栓をしていく。 『うっ? おかしぃーどぉ、岩がたりないどぉー?』 手近な岩を全て積み上げても、洞穴の入り口はまだ半分ほどしか塞がれていなかった。 ついさっき、ティガれみりゃ自身が岩を「ぽぉ~い♪」してしまったためだ。 『う~~! だれか岩をもってきてぇ~~!』 叫ぶが、当然そんな誰かがいるわけもない。 『うー・・・』 ティガれみりゃは、岩をあきらめ、洞穴の奥へと歩を進める。 すると、そこにはティガれみりゃの帰りを"待っていなかった"たくさんのゆっくり達がいた。 「「「うーっ!! ゆっくりしねっ!」」」 『う~♪ ふりゃ~ん、ただいまだどぉ~♪』 ティガれみりゃが満面の笑顔を浮かべた先、 そこには、いるはいるは、胴体付き・無しあわせて100体近いゆっくりフランたちがいた。 「「「しねっ! ふらん達をとじこめるティガはゆっくりしねっ!」」」 笑顔を向けるティガれみりゃに対して、ゆっくりフラン達は明確な敵意を露わにする。 全員が中空に舞い上がり、臨戦態勢をとりながらティガれみりゃを睨み付けている。 『うっう~♪ そんないじわる言っちゃダメなんだどぉ~♪』 その敵意をまるで理解していないのか、 ティガれみりゃは、よったよったとフラン達の下へ近づいていく。 だが、フラン達の集団は、すぅーと静かに移動し、ティガれみりゃが近づいたぶんだけ距離をとる。 『うぅ~~?』 不思議そうに顔を傾けるティガれみりゃ。 額に少し汗を浮かべつつ、今度はお気に入りのフレーズとポーズを決める。 『ぎゃお~♪ いっしょにあそんでくれないと、た~べちゃうぞぉ~♪』 バッチリだ。 ティガれみりゃは自分に惚れ惚れした。 こんなにもかっこよくて、ぷりちぃ~な自分の姿を見せられては、 照れ屋さんなフラン達もメロメロになって、自分に寄ってきてくれるにちがいない。 手を大きく広げて、いつでもフラン達を受け止められるように準備するティガれみりゃ。 ……だが。 「「「…………」」」 ゆっくりフラン達は微動だにせず、軽蔑するような冷たい視線をティガれみりゃに送るだけだった。 『うぅ~~~~……』 ティガれみりゃは困ってしまった。 そして、なんだか鼻の奥が少し熱くなっているのを感じた。 『うー♪ ふりゃーん♪』 すすすっ。 『まつんだどぉ~♪』 すすすっ。 『うっう~うぁうぁ~♪』 すすすっ。 ティガれみりゃは何度となく、フラン達とのスキンシップを試みようとアプローチを繰り返す。 しかし、フラン達は、そんなティガれみりゃに敵意だけを向けて、空中を静かに逃げ回るだけだった。 『うぅぅぅぅ……。なんで、れみりゃをむしするんだどぉ……』 目の端にたまる涙が流れ出さないよう、鼻の上に力を込めてこらえるティガれみりゃ。 その瞬間、ティガれみりゃは大事なことを思い出し、ぱぁーっと顔を輝かせる。 『うー! そうだどぉ! 忘れるところだったどぉ!』 ティガれみりゃはゴソゴソとポケットに手をつっこみ、一本の枯れ木を取り出して掲げた。 『うっうー♪ れみりゃとくせいのおだんご~♪ とぉーってもおいしぃどぉー♪』 ティガれみりゃが掲げたもの。 それは、ちょうど昨晩、ティガれみりゃが山間の窪地に築かれたゆっくり達の集落を遅い、 ゆっくり達を枯れ木に突き刺して作った、れみりゃ印の"とくせいゆっくりだんご"だった。 きっとフラン達はおなかが空いていて、それで遊ぶのを嫌がっているに違いない。 そう結論づけたティガれみりゃは、そのゆっくりだんごをフラン達に向ける。 「「「…………」」」 しかし、フラン達は何の反応も示さなかった。 それもそのはず。 本来、生粋の捕食種であるフランは、生きた獲物を捕らえ、嬲り、そして圧倒的な力を誇示しながら食すのだ。 野生の動物がそうであるように、誇り高き捕食者は、生きた獲物にしか興味を示さない。 死んだ獲物を食べるなど、食べ残しで生をなすハイエナか、意地汚い被捕食種ゆっくりくらいのものだ。 少なくとも、このゆっくりフラン達は、その矜持を忘れてはいなかった。 『うぅ? どうしたんだどぉ? おいしぃおかしだどぉ?』 ちっとも興味を示さないフランに、戸惑うティガれみりゃ。 『う~! たべないと、た~べちゃうぞ~!』 おかしなことを口走りつつ、ティガれみりゃは無理矢理ゆっくりだんごをフラン達に近づける。 けれど、フランはゆっくりだんごを食べることはなく、空中からティガれみりゃを睨むだけだった。 「うぅー……どぉーしていうこときいてくれないんだどぉー……」 どっすん! ティガれみりゃは目尻に涙を浮かべながら、地面に座り込む。 その刹那。 何匹からのフランが、この時を待っていたかの如く、 急にスピードを上げて飛行を開始した。 目指すは、この洞穴の出口! このフラン達は、空腹にも耐えながら、 ティガれみりゃに隙ができるこのタイミングを狙っていた。 「「うーっ!!」」 赤い弾丸となって、洞穴の暗闇を裂くフラン達。 『うーっ!?』 遅れながらも、数匹のフランが脱走しようとしていることに気付くティガれみりゃ。 しかし、いくら巨大なティガれみりゃといえ、敏捷性は小型のゆっくりフラン達の方が上。 ゆっくりフラン達の脱出は成功するかに思えた。 『うーっ!! 逃げちゃだめぇーっ!!!』 ティガれみりゃは、もっていたゆっくりだんご……もとい立ち枯れた木を、 いままさに洞穴の外へ出ようとしていたフラン達に投げつけた。 「「ううーっ!」」 いきおいよく飛んでいった木は、見事フランに命中する。 そして、尖った枝はフラン達に突き刺さり、彼女達を"ゆっくりだんご"の一つにしてしまった。 「「ううっ!!??」」 その光景を見て驚く、他のゆっくりフラン達。 彼女達は、今回の脱出計画がうまくいき次第、同様の手でこの洞穴から抜け出そうと考えていた。 『だぁーめぇぇぇ! ふりゃんはれみりゃとあそぶのぉぉっ!!』 洞穴の中にティガれみりゃの叫びが響き渡る。 『う~~~! 逃げちゃ、めぇ~~なの! はやくもどってくるのぉ!』 ティガれみりゃは、ゆっくりだんごと化したフラン達へ呼びかける。 「う、うぅぅぅぅ……」 「ゆ、ゆっぐり、じねぇぇぇ……」 他ならぬティガれみりゃの手によって、ゆっくりだんごとなったフラン達は、 当然動くこともできず、地獄の苦しみを味わっていた。 極めて高い生命力と再生力を持つゆっくりフランであったが、 数日前にこの洞穴に連れ込まれてからといたものの、食べたのは最初から洞穴内に住んでいたゆっくりや、小動物だけ。 ろくな食事もとらぬまま体を貫かれたフラン達は、本来の再生力も発揮できず、間もなく息を引き取った。 『う~~? ふりゃ~~ん?』 フラン達の様子がおかしいことに、ようやく気付いたティガれみりゃ。 が、時すでに遅く。ゆっくりだんごとなったフランは、二度とティガれみりゃの声に反応することはなかった。 『うぁぁぁぁぁっ! なぁんでだどぉぉぉっっ!?』 数匹とはいえ、フランが死んでしまったことを知り、 ティガれみりゃはこらえていたものを一気に噴出させる。 『うわぁぁぁぁぁぁん!!』 その鳴き声は凄まじく、洞穴を反響して振るわせる。 『しゃくやぁー! しゃくやはなにしてるんだぉー! ふりゃんがぁーーーっ!!』 来るはずもない、遺伝子に刻み込まれた従者の名を連呼するティガれみりゃ。 ドタンと大の字に倒れ込み、仰向けのまま手足をバタバタさせる。 『ひっく、ひっく、ひっく……うぅー…ふりゃーん……』 嗚咽を続けるティガれみりゃ。 『うぅ……うぅ……』 ティガれみりゃの涙は本物であった。 ティガれみりゃには、"ゆっくりフランを自分の巣に閉じこめて愛でようとする"習性があるのだ。 ゆっくりフラン達からすればたまったものではないが、 ティガれみりゃからすれば良かれと思ってやっていることだった。 『……うぅ……うぅ?』 ひっくひっくと肩で泣くティガれみりゃ。 やがて、涙もかれてくると、今度は眉根をへの字にしかめさせた。 『うぅー……泣いたら、おなかがへったどぉー♪』 今までの涙がウソのよう。 すっかりいつも通りの下ぶくれスマイルを作って、自分のお腹具合を心配しだすティガれみりゃ。 れみりゃ種……ひいてはゆっくり全体に見られるこの思考の切り替え・責任転嫁は、 あるいは"辛いことはさっさと忘れる"ことでゆっくりしようという、ゆっくり達なりの知恵なのかもしれない。 『うっうー♪ 今日はひさしぶりにぷっでぃーんが食べたいどぉー♪』 そう言うと、れみりゃは自らの体を起こそうとする。 起こそうとして……違和感を覚える? 『う~、はやくぷっでぃん食べにいくどぉ♪』 せーの! 体を起こそうとするティガれみりゃ。 『う~♪』 よいしょ! 『うーーっ!』 こらしょ! 『うーーっ! うーーーっ!!』 ティガれみりゃは何度も上半身を起こそうと試みる。 しかし、起きあがれるのはせいぜい頭部のみで、 筋肉のついてないお腹はすぐにプルプル震えだし、力尽きてしまう。 ずてーん! 体を起こすことができず、ティガれみりゃは後頭部を地面にぶつける。 『ぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~っ』 後頭部の痛みに、ティガれみりゃは鼻の上のあたりを真っ赤にしながら、声にならない嗚咽をもらす。 その後も何度か起きあがろうとするが、結果は同じだった。 『うわぁぁぁぁん! 起きられないどぉーーーっ!』 泣き出すティガれみりゃ。 ゆっくりゃザウルスにも見られる傾向であるが、 ティガれみりゃもまた、仰向けに倒れてしまうと中々立ち上がることができないのだ。 『しゃくやぁぁぁ! はやくおこしてくれないと、なーいちゃうぞぉーー!』 既に泣いてるって! 洞穴に残されたゆっくりフラン達が、心の中で一斉に突っ込む。 そして、捕食種の本能がそうさせるのか、起きあがれないティガれみりゃを見ると、 ゆっくりフラン達は一斉にティガれみりゃへの攻撃を始めた。 今、一斉攻撃をすればティガれみりゃを倒せると判断したのだ。 「うぅーっ!」 「ゆっくりしねっ!」 「ティガれみりゃはしねっ!」 「ゆっくりしないでしねぇぇ!」 「しねしねしねしねぇぇぇーーっ!」 ゆっくりフラン達の怒濤の攻撃。 噛みつき、体当たりし、にくまんの顔に拳を打ち込み、 レーヴァティンと呼ばれる突起物をガシガシ叩きつける。 これだけの集中攻撃を受ければ、たとえドス種であってもひとたまりもないだろう。 ゆえに、経験したことの無い脅威に対して、本能が誤った判断を下したとしても責めることはできない。 『うぅぅ~~~? ……ふりゃんたち、れみりゃをなぐさめてくれるのぉ?』 フラン達の攻撃を受ければ受けるほど、ティガれみりゃは徐々に泣きやんでいく。 ティガれみりゃに、ふらん達の攻撃は効いていなかった。 それどころか。 『う~~♪ くしゅぐったいどぉ~~♪』 とうとう下ぶくれスマイルを取り戻し、きゃっきゃと喜びはじめてしまった。 「「「うぅーーっ!?」」」 自慢の攻撃が全く効いておらず、流石に驚愕をあらわにする、ゆっくりフラン達。 もし、ティガれみりゃが起きられずに泣いている間、ティガれみりゃに構わず逃げ出していたらなら、 今頃このフラン達は気持の良い満月の夜空を謳歌していたことだろう。 しかし、もう遅い。 「しねっ!しねっ!」 『う~~~?』 ティガれみりゃのにくまん顔に馬乗りになり、拳を打ち続けるゆっくりフラン。 その姿を見たティガれみりゃは、肉まん脳をフル回転させる。 『うー! ひらいめいたどぉー!』 ティガれみりゃは、うんしょ、うんしょと、 苦労しながら体を回転させ、徐々に俯せの姿勢へとなっていく。 その間、ティガれみりゃの体にまとわりついていたフラン達は振り落とされ、 離陸に失敗したものは、そのままティガれみりゃの体に押しつぶされてしまった。 俯せになったティガれみりゃは、両手を使い、上半身を起こす。 と同時に、膝を立て、両手と組み合わせることで立ち上がっていく。 『う~~~~! やったどぉ~~~~!』 バンザーイ!と両手を大きく広げて、立てたことをアピールするティガれみりゃ。 『すっごいどぉー! れみりゃはやっぱり天才だどぉ♪』 「「うううううう……」」 喜びを爆発させるティガれみりゃに対し、 フラン達はせっかくのチャンスを無駄にしてしまったことを悔しがる。 『うっう~うぁうぁ♪ うっう~うぁうぁ♪』 どったばったと手足を動かし、洞穴の中で踊り出すティガれみりゃ。 ティガれみりゃが踊る度に、洞穴が揺れ、天井からは希に小さな石つぶが落ちてくる。 身の危険を感じ、洞穴の奥で一カ所にかたまるゆっくりフラン達。 『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~♪』 ご自慢のダンスを踊りきり、最高にハイになるティガれみりゃ。 やっぱり自分ってば凄い! かわいいし! かっこいい! 頭もいい! こうまかんのおぜうさまにふさわしい、すてきなれでぃーだ! ティガれみりゃは御機嫌なまま、洞穴のすみっこに固まるフラン達に向き直る。 さぁ、こんどは何をして遊ぼう? そんなことをティガれみりゃが考えた時だった! 「……ぅー」 『うっ?』 ティガれみりゃは、頭の奥の方で、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。 「……ぅーぅー」 まただ。 やっぱり誰かが自分のことを呼んでいる。 だって、あたまのなかで声がするんだもん。 そう結論づけたティガれみりゃは、周囲をきょろきょろ見回したのち、 どったどったと慌てて洞穴の外へと出て行く。 「…う?」 残されたフラン達は、その様子を不思議そうに眺めていた。 洞穴の外。 ティガれみりゃはそらを見上げて目をこらす。 『うー……、うー……、うーっ♪』 空を飛ぶあるものを見つけ、歓声をあげるティガれみりゃ。 空を見上げる視線の先では、うーぱっくの親子が満月の夜空を横断していた。 『う~~♪ まっでぇぇ~~♪』 うーぱっく達を見つけたティガれみりゃは、 そのままうーぱっく達の後を追って歩いていく。 『う~♪ まつんだどぉ~♪ れみりゃもおそらをとぶんだどぉ~♪』 よったよった、どったどった。 よったよった、どったどった。 ティガれみりゃは楽しそうに、うーぱっく達の後を追う。 空を飛ぶうーっぱくと、地面をどすどす歩くティガれみりゃでは、どんどん間の距離が離れていってしまう。 現に、すでにうーぱっく達はれみりゃの視界から消えていた。 しかし、れみりゃには不思議な確信があった。 このままこちらへ歩いていけばよいのだと。 「ぅーぅー」 「ぅーぅー」 「ぅーぅー」 だって、頭の中にあのうーぱっく達の声が聞こえてくるのだから。 そして、この声の先には、だいたい美味しそうなおまんじゅう達がいっぱいいるのだ。 『う~~♪ まっててねぇ~ふりゃ~ん♪』 笑顔で闊歩するティガれみりゃ。 ふと空を見上げると、おしそうな真ん丸お月様が輝いていた。 まるでおまんじゅうみたい。 でも、色はぷっでぃーんに近いかな? そんなことを考えながらティガれみりゃは木々を押し倒していく。 こんなにもお月様が美味しそうだから、歌っちゃおう♪ ティガれみりゃは短くずんぐりむっくりした手足を、うぁうぁと動かす。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 一方、その頃。 洞穴に残されたフラン達は、ティガれみりゃがいなことを確認して、月夜へ飛翔を開始していた。 余談だが、その後しばらく、ゆっくりフランによる必要以上のれみりゃ種への虐待が続いたという……。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ3・(タイトル未定)』 ============================ (あとがき) byティガれみりゃの人 ……とか名乗っておいた方が良いのでしょうか? どうも、前回『ティガれみりゃ』を書いた者ですm(_ _)m とりあえず今回が2回目です。 1回目を書いた時点で、今回の範囲まではほぼ終わっていたので、 連日になってしまいましたが、upさせていただきました。 (少しでも楽しんでいただければ幸いです) その3は……しばらくお時間をいただくことになるかもしれません(汗 なお、作中のティガれみりゃとうーぱっくの関係ですが、 某有名怪獣映画のとある設定のオマージュにだったりしますw ============================ このSSに感想を付ける
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ティガれみりゃ その2 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ』の続きになります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 虐め……というのとは少し違うかもしれません。 すみません、まだ続きます。 文字数設定の関係上、改行が変な箇所があるかもしれません。 (あまりにも読みづらいようでしたら、修正版をupします) 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 ======================== 2、異常震域 月夜の下に広がる森。 小動物達が俄にざわめきだし、 彼等がさきほどまで寝床にしていた木々が、バキバキと折れていく。 その原因は、全て一体の巨大生物によるものだった。 よったよった、どったどった。 よったよった、どったどった。 短い足で、不器用なステップを踏みながら、 その巨体とは裏腹に、実にゆっくり進んでいく巨大生物。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 その巨大生物、通称・ティガれみりゃは、 歌いながら楽しそうに夜の森を往く。 見た目は、中綿たっぷりの、だぶだぶくたくたの恐竜型ぬいぐるみ。 恐竜の口の部分がぱっくり開き、そこにれみりゃ種特有の、憎たらしげな下ぶくれスマイルが覗いている。 だが、その滑稽な見た目に反して、その体は尻尾をあわせれば20メートルにも届かんとする巨大さを誇る。 短い手足をバタバタさせて、「うぅーうぅーうぁうぁ♪」とやるたびに、足下の生物達は生命の危険にさらされる。 それゆえ、数多くの命が暮らすこの森にあっても、 意図的にティガれみりゃに近づこうとする者は、まずいない。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪ とぉ~ってもぷりちぃ~~ティガれみりゃ~~♪』 本人はといえば、そんなことは気にも留めず、相変わらずの御機嫌ノリノリで森を進む。 いっそさっさと通過するなら、 動物達や森で暮らす他のゆっくり達にとっても、まだマシだった。 けれど、ティガれみりゃにそんな空気を読む力があるはずもなく、 よったよった、えっちらおっちら。木を倒し、ゆっくりを踏みつけ、動物達を脅かして歩いていく。 「ゆゆゆっ! ティガれみりゃはゆっくりしないで、どっかへいってね!」 「ゆぅ~~! おかーしゃん、こわいよぉぉっ!」 ティガれみりゃの足下、逃げ遅れたれいむの親子が、木々の影に隠れていた。 こんな恐い場所からはさっさと逃げ出したかったが、 ティガれみりゃが歩く度に震動が起こり、なぎ倒された木々が倒れてくるせいで、 おちおち移動することもできずにいた。 「おかーしゃーん! おかーしゃーーん!」 「だ、だいじょうだよ! あかちゃんのことは、れいむが守るよ!」 身を寄せ合い、震える親子。 そんな親子の願いが通じたのか、 ティガれみりゃは親子を踏みつけることなく、 そのすぐ横を通過して、森の奥へと向かっていく。 「ゆぅ~~~? なんとか助かったよぉ~~!?」 「やったねぇ~~! おかーしゃーん!」 顔を見合わせ喜びあう、れいむの親子。 だが、次の瞬間。 どっすん! 「ゆべぇぇぇっっ!」 「ゆぐぎゃぁぁぁ!」 ティガれみりゃの尻尾が振り下ろされ、れいむの親子はぺちゃんこに潰される。 残されたのは、地面に貼り付けられた、あんこの染みだけだった。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~~♪』 もちろん、ティガれみりゃが一々そんなことに気付くはずもない。 ティガれみりゃは、その後も歩き続け、30分後目的地の前で足を止めた。 『う~~、ついたどぉ♪ さっすが、れみりゃ! すらっとのびたあしは、あるくのもはぁやいどぉ~♪』 自分の短足・鈍足を棚に上げ、自画自賛するれみりゃ。 ちなみに、ここまで歩いてきた平均歩行速度は、その巨体からすれば驚くほど遅い時速4kmしかない。 うぁうぁダンスをしながらの歩行とはいえ、この遅さこそ、この突然変異種が"ゆっくり"であることの証ともいえる。 『う~♪ みんなぁ~まっててねぇ~♪』 猫なで声をあげるティガれみりゃ。 ティガれみりゃの目の前は崖になっており、その中の一角に沢山の岩が積み上げられていた。 岩の奥には巨大な洞穴が広がっており、そこがティガれみりゃの巣穴となっていた。 "こーまかんのあるじは、留守のあいだのとじまりもかんぺきだどぉー♪" ティガれみりゃはそう言って、洞穴の入り口に岩を積み上げ、栓をしていたのだ。 『うー、岩はじゃまだどぉ! ぽいするのぽーい♪』 言うや否や、ひょいひょいと岩を持ち上げ、ぽいぽい投げ捨てていくティガれみりゃ。 その岩を積み上げたのが自分自身であることは、既に忘れてしまっているらしい。 『うー♪ あいたどぉ♪』 積み上げられた岩のバリケードは瓦解し、その先に大きな洞穴が姿をみせる。 長年をかけて山の地下水が空けた空洞は、ティガれみりゃが余裕で入れるほどの大きさだ。 『れでぃ~は、しっかりかぎをしめるどぉ♪』 洞穴の中に入ったティガれみりゃは、再び岩を積み上げ、洞穴の入口に栓をしていく。 『うっ? おかしぃーどぉ、岩がたりないどぉー?』 手近な岩を全て積み上げても、洞穴の入り口はまだ半分ほどしか塞がれていなかった。 ついさっき、ティガれみりゃ自身が岩を「ぽぉ~い♪」してしまったためだ。 『う~~! だれか岩をもってきてぇ~~!』 叫ぶが、当然そんな誰かがいるわけもない。 『うー・・・』 ティガれみりゃは、岩をあきらめ、洞穴の奥へと歩を進める。 すると、そこにはティガれみりゃの帰りを"待っていなかった"たくさんのゆっくり達がいた。 「「「うーっ!! ゆっくりしねっ!」」」 『う~♪ ふりゃ~ん、ただいまだどぉ~♪』 ティガれみりゃが満面の笑顔を浮かべた先、 そこには、いるはいるは、胴体付き・無しあわせて100体近いゆっくりフランたちがいた。 「「「しねっ! ふらん達をとじこめるティガはゆっくりしねっ!」」」 笑顔を向けるティガれみりゃに対して、ゆっくりフラン達は明確な敵意を露わにする。 全員が中空に舞い上がり、臨戦態勢をとりながらティガれみりゃを睨み付けている。 『うっう~♪ そんないじわる言っちゃダメなんだどぉ~♪』 その敵意をまるで理解していないのか、 ティガれみりゃは、よったよったとフラン達の下へ近づいていく。 だが、フラン達の集団は、すぅーと静かに移動し、ティガれみりゃが近づいたぶんだけ距離をとる。 『うぅ~~?』 不思議そうに顔を傾けるティガれみりゃ。 額に少し汗を浮かべつつ、今度はお気に入りのフレーズとポーズを決める。 『ぎゃお~♪ いっしょにあそんでくれないと、た~べちゃうぞぉ~♪』 バッチリだ。 ティガれみりゃは自分に惚れ惚れした。 こんなにもかっこよくて、ぷりちぃ~な自分の姿を見せられては、 照れ屋さんなフラン達もメロメロになって、自分に寄ってきてくれるにちがいない。 手を大きく広げて、いつでもフラン達を受け止められるように準備するティガれみりゃ。 ……だが。 「「「…………」」」 ゆっくりフラン達は微動だにせず、軽蔑するような冷たい視線をティガれみりゃに送るだけだった。 『うぅ~~~~……』 ティガれみりゃは困ってしまった。 そして、なんだか鼻の奥が少し熱くなっているのを感じた。 『うー♪ ふりゃーん♪』 すすすっ。 『まつんだどぉ~♪』 すすすっ。 『うっう~うぁうぁ~♪』 すすすっ。 ティガれみりゃは何度となく、フラン達とのスキンシップを試みようとアプローチを繰り返す。 しかし、フラン達は、そんなティガれみりゃに敵意だけを向けて、空中を静かに逃げ回るだけだった。 『うぅぅぅぅ……。なんで、れみりゃをむしするんだどぉ……』 目の端にたまる涙が流れ出さないよう、鼻の上に力を込めてこらえるティガれみりゃ。 その瞬間、ティガれみりゃは大事なことを思い出し、ぱぁーっと顔を輝かせる。 『うー! そうだどぉ! 忘れるところだったどぉ!』 ティガれみりゃはゴソゴソとポケットに手をつっこみ、一本の枯れ木を取り出して掲げた。 『うっうー♪ れみりゃとくせいのおだんご~♪ とぉーってもおいしぃどぉー♪』 ティガれみりゃが掲げたもの。 それは、ちょうど昨晩、ティガれみりゃが山間の窪地に築かれたゆっくり達の集落を遅い、 ゆっくり達を枯れ木に突き刺して作った、れみりゃ印の"とくせいゆっくりだんご"だった。 きっとフラン達はおなかが空いていて、それで遊ぶのを嫌がっているに違いない。 そう結論づけたティガれみりゃは、そのゆっくりだんごをフラン達に向ける。 「「「…………」」」 しかし、フラン達は何の反応も示さなかった。 それもそのはず。 本来、生粋の捕食種であるフランは、生きた獲物を捕らえ、嬲り、そして圧倒的な力を誇示しながら食すのだ。 野生の動物がそうであるように、誇り高き捕食者は、生きた獲物にしか興味を示さない。 死んだ獲物を食べるなど、食べ残しで生をなすハイエナか、意地汚い被捕食種ゆっくりくらいのものだ。 少なくとも、このゆっくりフラン達は、その矜持を忘れてはいなかった。 『うぅ? どうしたんだどぉ? おいしぃおかしだどぉ?』 ちっとも興味を示さないフランに、戸惑うティガれみりゃ。 『う~! たべないと、た~べちゃうぞ~!』 おかしなことを口走りつつ、ティガれみりゃは無理矢理ゆっくりだんごをフラン達に近づける。 けれど、フランはゆっくりだんごを食べることはなく、空中からティガれみりゃを睨むだけだった。 「うぅー……どぉーしていうこときいてくれないんだどぉー……」 どっすん! ティガれみりゃは目尻に涙を浮かべながら、地面に座り込む。 その刹那。 何匹からのフランが、この時を待っていたかの如く、 急にスピードを上げて飛行を開始した。 目指すは、この洞穴の出口! このフラン達は、空腹にも耐えながら、 ティガれみりゃに隙ができるこのタイミングを狙っていた。 「「うーっ!!」」 赤い弾丸となって、洞穴の暗闇を裂くフラン達。 『うーっ!?』 遅れながらも、数匹のフランが脱走しようとしていることに気付くティガれみりゃ。 しかし、いくら巨大なティガれみりゃといえ、敏捷性は小型のゆっくりフラン達の方が上。 ゆっくりフラン達の脱出は成功するかに思えた。 『うーっ!! 逃げちゃだめぇーっ!!!』 ティガれみりゃは、もっていたゆっくりだんご……もとい立ち枯れた木を、 いままさに洞穴の外へ出ようとしていたフラン達に投げつけた。 「「ううーっ!」」 いきおいよく飛んでいった木は、見事フランに命中する。 そして、尖った枝はフラン達に突き刺さり、彼女達を"ゆっくりだんご"の一つにしてしまった。 「「ううっ!!??」」 その光景を見て驚く、他のゆっくりフラン達。 彼女達は、今回の脱出計画がうまくいき次第、同様の手でこの洞穴から抜け出そうと考えていた。 『だぁーめぇぇぇ! ふりゃんはれみりゃとあそぶのぉぉっ!!』 洞穴の中にティガれみりゃの叫びが響き渡る。 『う~~~! 逃げちゃ、めぇ~~なの! はやくもどってくるのぉ!』 ティガれみりゃは、ゆっくりだんごと化したフラン達へ呼びかける。 「う、うぅぅぅぅ……」 「ゆ、ゆっぐり、じねぇぇぇ……」 他ならぬティガれみりゃの手によって、ゆっくりだんごとなったフラン達は、 当然動くこともできず、地獄の苦しみを味わっていた。 極めて高い生命力と再生力を持つゆっくりフランであったが、 数日前にこの洞穴に連れ込まれてからといたものの、食べたのは最初から洞穴内に住んでいたゆっくりや、小動物だけ。 ろくな食事もとらぬまま体を貫かれたフラン達は、本来の再生力も発揮できず、間もなく息を引き取った。 『う~~? ふりゃ~~ん?』 フラン達の様子がおかしいことに、ようやく気付いたティガれみりゃ。 が、時すでに遅く。ゆっくりだんごとなったフランは、二度とティガれみりゃの声に反応することはなかった。 『うぁぁぁぁぁっ! なぁんでだどぉぉぉっっ!?』 数匹とはいえ、フランが死んでしまったことを知り、 ティガれみりゃはこらえていたものを一気に噴出させる。 『うわぁぁぁぁぁぁん!!』 その鳴き声は凄まじく、洞穴を反響して振るわせる。 『しゃくやぁー! しゃくやはなにしてるんだぉー! ふりゃんがぁーーーっ!!』 来るはずもない、遺伝子に刻み込まれた従者の名を連呼するティガれみりゃ。 ドタンと大の字に倒れ込み、仰向けのまま手足をバタバタさせる。 『ひっく、ひっく、ひっく……うぅー…ふりゃーん……』 嗚咽を続けるティガれみりゃ。 『うぅ……うぅ……』 ティガれみりゃの涙は本物であった。 ティガれみりゃには、"ゆっくりフランを自分の巣に閉じこめて愛でようとする"習性があるのだ。 ゆっくりフラン達からすればたまったものではないが、 ティガれみりゃからすれば良かれと思ってやっていることだった。 『……うぅ……うぅ?』 ひっくひっくと肩で泣くティガれみりゃ。 やがて、涙もかれてくると、今度は眉根をへの字にしかめさせた。 『うぅー……泣いたら、おなかがへったどぉー♪』 今までの涙がウソのよう。 すっかりいつも通りの下ぶくれスマイルを作って、自分のお腹具合を心配しだすティガれみりゃ。 れみりゃ種……ひいてはゆっくり全体に見られるこの思考の切り替え・責任転嫁は、 あるいは"辛いことはさっさと忘れる"ことでゆっくりしようという、ゆっくり達なりの知恵なのかもしれない。 『うっうー♪ 今日はひさしぶりにぷっでぃーんが食べたいどぉー♪』 そう言うと、れみりゃは自らの体を起こそうとする。 起こそうとして……違和感を覚える? 『う~、はやくぷっでぃん食べにいくどぉ♪』 せーの! 体を起こそうとするティガれみりゃ。 『う~♪』 よいしょ! 『うーーっ!』 こらしょ! 『うーーっ! うーーーっ!!』 ティガれみりゃは何度も上半身を起こそうと試みる。 しかし、起きあがれるのはせいぜい頭部のみで、 筋肉のついてないお腹はすぐにプルプル震えだし、力尽きてしまう。 ずてーん! 体を起こすことができず、ティガれみりゃは後頭部を地面にぶつける。 『ぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~っ』 後頭部の痛みに、ティガれみりゃは鼻の上のあたりを真っ赤にしながら、声にならない嗚咽をもらす。 その後も何度か起きあがろうとするが、結果は同じだった。 『うわぁぁぁぁん! 起きられないどぉーーーっ!』 泣き出すティガれみりゃ。 ゆっくりゃザウルスにも見られる傾向であるが、 ティガれみりゃもまた、仰向けに倒れてしまうと中々立ち上がることができないのだ。 『しゃくやぁぁぁ! はやくおこしてくれないと、なーいちゃうぞぉーー!』 既に泣いてるって! 洞穴に残されたゆっくりフラン達が、心の中で一斉に突っ込む。 そして、捕食種の本能がそうさせるのか、起きあがれないティガれみりゃを見ると、 ゆっくりフラン達は一斉にティガれみりゃへの攻撃を始めた。 今、一斉攻撃をすればティガれみりゃを倒せると判断したのだ。 「うぅーっ!」 「ゆっくりしねっ!」 「ティガれみりゃはしねっ!」 「ゆっくりしないでしねぇぇ!」 「しねしねしねしねぇぇぇーーっ!」 ゆっくりフラン達の怒濤の攻撃。 噛みつき、体当たりし、にくまんの顔に拳を打ち込み、 レーヴァティンと呼ばれる突起物をガシガシ叩きつける。 これだけの集中攻撃を受ければ、たとえドス種であってもひとたまりもないだろう。 ゆえに、経験したことの無い脅威に対して、本能が誤った判断を下したとしても責めることはできない。 『うぅぅ~~~? ……ふりゃんたち、れみりゃをなぐさめてくれるのぉ?』 フラン達の攻撃を受ければ受けるほど、ティガれみりゃは徐々に泣きやんでいく。 ティガれみりゃに、ふらん達の攻撃は効いていなかった。 それどころか。 『う~~♪ くしゅぐったいどぉ~~♪』 とうとう下ぶくれスマイルを取り戻し、きゃっきゃと喜びはじめてしまった。 「「「うぅーーっ!?」」」 自慢の攻撃が全く効いておらず、流石に驚愕をあらわにする、ゆっくりフラン達。 もし、ティガれみりゃが起きられずに泣いている間、ティガれみりゃに構わず逃げ出していたらなら、 今頃このフラン達は気持の良い満月の夜空を謳歌していたことだろう。 しかし、もう遅い。 「しねっ!しねっ!」 『う~~~?』 ティガれみりゃのにくまん顔に馬乗りになり、拳を打ち続けるゆっくりフラン。 その姿を見たティガれみりゃは、肉まん脳をフル回転させる。 『うー! ひらいめいたどぉー!』 ティガれみりゃは、うんしょ、うんしょと、 苦労しながら体を回転させ、徐々に俯せの姿勢へとなっていく。 その間、ティガれみりゃの体にまとわりついていたフラン達は振り落とされ、 離陸に失敗したものは、そのままティガれみりゃの体に押しつぶされてしまった。 俯せになったティガれみりゃは、両手を使い、上半身を起こす。 と同時に、膝を立て、両手と組み合わせることで立ち上がっていく。 『う~~~~! やったどぉ~~~~!』 バンザーイ!と両手を大きく広げて、立てたことをアピールするティガれみりゃ。 『すっごいどぉー! れみりゃはやっぱり天才だどぉ♪』 「「うううううう……」」 喜びを爆発させるティガれみりゃに対し、 フラン達はせっかくのチャンスを無駄にしてしまったことを悔しがる。 『うっう~うぁうぁ♪ うっう~うぁうぁ♪』 どったばったと手足を動かし、洞穴の中で踊り出すティガれみりゃ。 ティガれみりゃが踊る度に、洞穴が揺れ、天井からは希に小さな石つぶが落ちてくる。 身の危険を感じ、洞穴の奥で一カ所にかたまるゆっくりフラン達。 『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~♪』 ご自慢のダンスを踊りきり、最高にハイになるティガれみりゃ。 やっぱり自分ってば凄い! かわいいし! かっこいい! 頭もいい! こうまかんのおぜうさまにふさわしい、すてきなれでぃーだ! ティガれみりゃは御機嫌なまま、洞穴のすみっこに固まるフラン達に向き直る。 さぁ、こんどは何をして遊ぼう? そんなことをティガれみりゃが考えた時だった! 「……ぅー」 『うっ?』 ティガれみりゃは、頭の奥の方で、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。 「……ぅーぅー」 まただ。 やっぱり誰かが自分のことを呼んでいる。 だって、あたまのなかで声がするんだもん。 そう結論づけたティガれみりゃは、周囲をきょろきょろ見回したのち、 どったどったと慌てて洞穴の外へと出て行く。 「…う?」 残されたフラン達は、その様子を不思議そうに眺めていた。 洞穴の外。 ティガれみりゃはそらを見上げて目をこらす。 『うー……、うー……、うーっ♪』 空を飛ぶあるものを見つけ、歓声をあげるティガれみりゃ。 空を見上げる視線の先では、うーぱっくの親子が満月の夜空を横断していた。 『う~~♪ まっでぇぇ~~♪』 うーぱっく達を見つけたティガれみりゃは、 そのままうーぱっく達の後を追って歩いていく。 『う~♪ まつんだどぉ~♪ れみりゃもおそらをとぶんだどぉ~♪』 よったよった、どったどった。 よったよった、どったどった。 ティガれみりゃは楽しそうに、うーぱっく達の後を追う。 空を飛ぶうーっぱくと、地面をどすどす歩くティガれみりゃでは、どんどん間の距離が離れていってしまう。 現に、すでにうーぱっく達はれみりゃの視界から消えていた。 しかし、れみりゃには不思議な確信があった。 このままこちらへ歩いていけばよいのだと。 「ぅーぅー」 「ぅーぅー」 「ぅーぅー」 だって、頭の中にあのうーぱっく達の声が聞こえてくるのだから。 そして、この声の先には、だいたい美味しそうなおまんじゅう達がいっぱいいるのだ。 『う~~♪ まっててねぇ~ふりゃ~ん♪』 笑顔で闊歩するティガれみりゃ。 ふと空を見上げると、おしそうな真ん丸お月様が輝いていた。 まるでおまんじゅうみたい。 でも、色はぷっでぃーんに近いかな? そんなことを考えながらティガれみりゃは木々を押し倒していく。 こんなにもお月様が美味しそうだから、歌っちゃおう♪ ティガれみりゃは短くずんぐりむっくりした手足を、うぁうぁと動かす。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 一方、その頃。 洞穴に残されたフラン達は、ティガれみりゃがいなことを確認して、月夜へ飛翔を開始していた。 余談だが、その後しばらく、ゆっくりフランによる必要以上のれみりゃ種への虐待が続いたという……。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ3・(タイトル未定)』 ============================ (あとがき) byティガれみりゃの人 ……とか名乗っておいた方が良いのでしょうか? どうも、前回『ティガれみりゃ』を書いた者ですm(_ _)m とりあえず今回が2回目です。 1回目を書いた時点で、今回の範囲まではほぼ終わっていたので、 連日になってしまいましたが、upさせていただきました。 (少しでも楽しんでいただければ幸いです) その3は……しばらくお時間をいただくことになるかもしれません(汗 なお、作中のティガれみりゃとうーぱっくの関係ですが、 某有名怪獣映画のとある設定のオマージュにだったりしますw ============================ このSSに感想を付ける
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ティガれみりゃ その4 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ3』の後編になります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 本家東方のキャラの性格口調、壊れ気味です すみません、まだ続きます。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 ======================== 4、誇りをかけた試練(後編) 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』 「ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪」 歌いながら森を往く2匹のゆっくり。 よったよったどたどた歩く、巨大ゆっくり・ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃの頭の上に乗っている、通常サイズのゆっくりゃザウルス。 全長20メートルの、くてくてだぼだぼのヌイグルミ風恐竜。 大きく開かれた口から覗く、れみりゃ種特有の下ぶくれスマイル。 その大きな顔の上の、恐竜の頭部の上では、 ゆっくりゃザウルスが、腹ばいになって、ティガれみりゃにしがみついている。 ゲスまりさに襲われて千切られた手足と尻尾は、もう殆ど回復しきっている。 ニコニコ笑いながら、体全体を左右に揺らしながらリズムをとっている。 『うっう~うぁうぁ~♪』 「うっう~うぁうぁ~♪」 ゆっくりゃザウルス……先だって子供を失った親れみりゃは、 その悲しみを払拭するかの如く、楽しげに歌う。 親れみりゃにとって、ティガれみりゃの存在は、 まさに希望であり、憧れであり、救世主であった。 このティガれみりゃと一緒なら、どんな困難も悲しみも乗り越えられる。 親れみりゃは、巨大なティガれみりゃに揺られながら、かつてない安心と勇気を感じていた。 ティガれみりゃもまた、親れみりゃのことを、 親友のように、妹のように、娘のように愛おしく感じていた。 その巨体故に、他の生物から常に避けられ続けるティガれみりゃにとって、 自分をこの上なく慕ってくれる親れみりゃの存在が、嬉しくて楽しくてたまらなかった。 この温かい気持ちをどう言えばいいのだろう? この胸にこみ上げる幸せをどう表現すればよいのだろう? そんな時、不器用なれみりゃ種がとる行動は一つ。 嬉しい時も、悲しい時も、わき上がる思いをあらわにして。 (歌っちゃおう♪) (踊っちゃおう♪) 『ティガ☆』 「れみ☆」 『りゃ☆』 「うー♪」 『「にぱぁ~~~♪」』 決まったぁー♪ 渾身の「れみりゃ☆うー」が決まり、 ますます幸福感に包まれる2人のれみりゃ。 そんな2人の前に、1人の少女が現れた。 「やぁ! ずいぶんと御機嫌だねぇ~」 少女は空を飛んでいた。 知識のあるゆっくりならば、その時点でその少女が人間ではないこと。 恐い人間よりもさらに恐ろしい、妖怪と呼ばれる存在であることに気付いただろう。 しかし、そんな知識、れみりゃ種に求めるのは酷である。 『うっうー♪ れみりゃはいつでも御機嫌だどぉー♪』 「うー♪ おねぇーさんだぁーれだどぉ?」 屈託無い笑顔で少女とのコミュニケーションに応じる2人のれみりゃ。 「……ふふ、まぁ名乗るほどのものじゃないさ」 そう言って口の端を歪める少女。 『う~? おねぇーさんの角、とぉ~~ってもかっこいいどぉ~~♪』 そう言って、目を輝かせるティガれみりゃ。 角。 そう、少女の頭には、二本の角が生えていた。 れみりゃ達が知るよしも無いが、この少女こそ、 既に幻想郷からは姿を消したといわれていた伝説の種族・"鬼"の一角、 小さな百鬼夜行、伊吹萃香であった。 「それより聞きたいんだけどさ……」 『う~、なんでもきくがいいどぉ♪』 「ゆっくりれみりゃってのは、おまえ達のことであってる?」 『「うーっ♪」』 嬉しそうに反応する、2人のれみりゃ。 『そうだどぉー! れみりゃは~~♪ ティガれみりゃだどぉ~~~♪』 ティガれみりゃは、両手を頭の横に持ち上げ、うぁうぁとリズムを取り出す。 『「うっうーうぁうぁ♪ うっうーうぁぅぁ♪」』 最高に上機嫌なれみりゃ達。 そんなれみりゃ達に、萃香の真意など図れるわけがなかった。 「そりゃよかったよ。おまえ達をさがしていたんだ」 『「う~~?」』 不思議そうに首を傾げる、れみりゃ達。 「そう、おまえ達がほしいんだ」 笑顔のまま屈託なく告げる萃香。 一方、れみりゃ達は、いっぱく置いた後、 両手を自分の頬に充てて、身をよじりだした。 『きゃーきゃー♪ おねぇーさんだいたんなんだどぉーー♪』 「すとれーとなあいのこくはくだどぉーーー♪」 頬を赤くして、きゃーきゃー騒ぐ、れみりゃ達。 れみりゃ達は、萃香の言葉を、プロポーズと勘違いしていた。 「ま、というわけでね、どっちか一人でいいんで、私についてきて欲しいだ」 空高くを指さす萃香。 『「う?」』 意味を理解しかねる、れみりゃ達。 萃香は、山の上の天上の地で、大宴会を開こうとしていた。 しかし、天上の地にあるツマミといえば桃くらいのもの。 やはりここは塩味のもの、お腹にたまるものも欲しい。 腹が減っては夜通しどんちゃん騒ぎもできぬ。である。 そこで、萃香はかねてから噂に聞いていた珍味。 ゆっくりれみりゃの肉まんを探していたのだ。 それも、ただのれみりゃ肉まんではない。 一層珍しく、美味しいとされる、ゆっくりゃザウルスの肉まんをだ。 そんな折、巨大な肉まん……もとい巨大なゆっくりゃザウルスがやって来るのを見つけたのだった。 話に聞いていたのとは、ずいぶんサイズが違うが、 まぁ本人達がれみりゃだと言っているのだから、そうなのだろう。 萃香は納得し、ティガれみりゃ達を連れ去ろうとする。 しかし、それに異を唱えたのは、他ならぬれみりゃ達だった。 「う~~~! イヤだどぉ~~~! れみりゃはもうおうちにかえりたいんだどぉ~~~!」 『う~~~、そうだどぉ~~~! れみりゃたちはおねぇーさんとはいけないんだどぉ』 ティガれみりゃは、親れみりゃをお家(紅魔館)に送り届ける途中であった。 もっとも、2人とも紅魔館の場所など知らず、適当に歌って踊って歩いているだけであったが。 「ふーんそっかぁ……それは困ったな」 ちっとも困った風じゃない顔をして、萃香は腕組みをして考えるフリをする。 「……よし! じゃあこうしよう! 私と勝負して勝った方が負けた方の言うことを聞く!」 明らかに強引な論法。 だが、れみりゃ相手には、このムチャクチャな単純さが功をそうした。 『う~~~、わかったどぉ♪ れみりゃがあいてになるどぉ♪』 「おっ、話がわかるじゃないか! デカイの!」 『そんなに褒められると、さすがに照れてしまうどぉ~~♪』 もじもじと体をよじるティガれみりゃ。 "デカイ"というのは、褒め言葉として捉えるらしい。 『う~♪ れみりゃが勝ったら、おねぇーさんの角が欲しいどぉ♪ それがあれば、れみりゃはさらにぱーふぇくとなれでぃーになれるどぉ♪』 「はいはい」 適当に流す萃香。 「きゃーっ! ティガれみりゃがさらにかっこよくなっちゃうどぉー!」 興奮する親れみりゃ。 ティガれみりゃは、そんな親れみりゃを手に乗せ、少し離れた場所の地面に降ろす。 『あぶないがらぁ~ちっちゃいれみりゃはそこで見ててぇ~♪』 「わかったどぉ! ティガれみりゃ~がんばるんだどぉ♪」 『う~♪ まかせるんだどぉ♪ ちっちゃいれみりゃもおうえんじでねぇ~ん♪』 「うー! まかせとけだどぉ♪」 「やれやれ……そろそろいいかい?」 待ちくたびれて、肩をまわす萃香。 『うーっ、準備おっけぇーだどぉ♪ おねぇーさんなんかイチコロだどぉー!』 「ふーん、はたしてそうかな♪」 萃香は笑みをこぼし、スペルカードを使用する。 鬼神"ミッシングパープルパワー" 『「ううううう~~~~っ!?」』 目を丸くして驚く、ティガれみりゃと親れみりゃ。 小さな人間の少女でしかなかった萃香が、みるみる間に大きくなり、 いまやティガれみりゃと同等か、それより一回り大きい姿になっていた。 『うー♪ おねぇーさんおっききぃどぉー』 自分より一回り多くなった萃香を見上げるティガれみりゃ。 「それじゃ、勝負開始といこうか!」 『うっうー! いっくどぉー♪』 ぎゃぉー! と叫びながら、ティガれみりゃが萃香に突進する。 いや、正しくは、それは突進などと呼べるシロモノではなかった。 どたばたどたばた。 短い手足を振り回しながら、えっちらおっちらやって来るティガれみりゃ。 (……お、遅っ) 萃香は、逆の意味で驚きつつ、 わけもなくティガれみりゃの突進をかわす。 『うっ?』 ドターン。 勢いそのままに前のめりに倒れるティガれみりゃ。 普通のれみりゃ種ならば、ここで泣き叫ぶところだが……。 『う~、ゆだんしちゃったどぉ♪』 ティガれみりゃは、笑顔のまま立ち上がる。 この点こそが、ティガれみりゃ最大の強点であった。 体の大きさや防御力ではない、言わば痛みを痛みとして認識しない超鈍感力。 根拠無きポジティブシンキングと思いこみ、そして実際に鈍い五感と思考の速度。 その自身が置かれた状況に対する"鈍さ"が、痛みや苦しみを和らげ、 いいこと・たのしいことだけを考えさせる。 そんな鈍感力こそが、ティガれみりゃの得た、ゆっくりするための切り札といえる。 『おねぇーさんはつよいからぁー、れみりゃもとっておきを披露するどぉ♪』 「ふーん、とっておきねぇ」 『くらっておどろくどぉ♪』 ティガれみりゃは、萃香に背を向けると、 両手を腰にあて、おしりと尻尾を左右に振り出した。 『ティガれみりゃの~、の☆う☆さ☆つ☆しっぽふりふりぃ~~だどぉ♪』 「きゃぁ~~~! しぇくしぃーーーすぎるどぉ♪」 ティガれみりゃの勇姿を見て、地上の親れみりゃが興奮する。 あんなセクシーな姿を見せられては、 どんな相手もメロメロになってしまわずにはいられない! 顔を紅潮させて叫ぶ親れみりゃは、本気でそう信じていた。 『うっふぅ~~~ん♪ 尻尾ふ~りぃふりぃ~~♪』 尻尾を左右に振りながら、徐々に萃香に近寄っていくティガれみりゃ。 だが、萃香は溜息をつくと、その尻尾をむんずと掴んだ。 『うっ?』 「そぉーら!」 『ううううっ!?』 萃香は尻尾を綱引きのように引っ張り、ティガれみりゃを引き寄せる。 ティガれみりゃは抗おうとジタバタするが、結局萃香の目の前まで引っ張られ、 「う~♪」と反転して萃香の方を向いた瞬間、両脇を掴まれ、空中に持ち上げられてしまった。 『うっうー♪ つかまっちゃったどぉ♪』 まだ余裕なティガれみりゃ。 『う~~~♪ たかいたかぁ~い♪』 いつも以上に高い位置からの眺めに、ご満悦だ。 「すっごいどぉー! ティガれみりゃがおそらをとんでるどぉーー!」 そんなティガれみりゃを見て、興奮する親れみりゃ。 「……はぁ」 ただ一人、萃香だけがテンションを下げていた。 『うー、おねぇーさんはつよくてやさしぃんだどぉ♪ れみりゃのめしつかいにしてあげるどぉ♪』 萃香が自分のために高い高いをしてくれているものと信じるティガれみりゃ。 観戦している親れみりゃにしても、萃香がティガれみりゃの力に恐れをなして、 "こうさんです~あなたがいちばんです~"とあがめているのだと勝手に思いこんでいる。 (もういっか。宴会に遅れてもなんだし) れみりゃ種のペースに巻き込まれているのがバカらしくなった萃香は、 さっさと勝負を決めることにする。 「そりゃ!」 『うっ!?』 抱え上げたティガれみりゃを、背中から地面に叩きつける萃香。 ドシーンと、土煙が舞い上がる。 『う~~~♪ おねぇーさんつよいどぉ♪』 地面に大の字になったまま、萃香を見上げるティガれみりゃ。 思い切り叩きつけたにもかかわらず、まだ笑顔でいるティガれみりゃを見て、 鈍さだけは大したものだと呆れる萃香。 萃香は、ティガれみりゃの上に馬乗りになり、 大の字に広げられたティガれみりゃの腕を両手で押さえつけて固定する。 『うぅ~~♪ おねぇーさんのえっちぃ~~♪』 「きゃー! あかちゃんたぢには、みぜられないどぉー!」 勝手に興奮するティガれみりゃと親れみりゃ。 それに対し、萃香は冷静にティガれみりゃの体を眺めて、吟味する。 こんなやつが本当に絶品珍味なのだろうか? だんだんと不安になってくる萃香。 ゆっくりが出没しはじめたのは最近のことなので、 鬼にしてもゆっくりに関する知識は殆ど持ちあわせていたなかった。 「うーん……いちおう味見してみようかな」 萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔に、そっと顔を近づける。 そして、舌をのばして、ほっぺたを舐め上げた。 『くしゅぐったぁーい♪』 照れるティガれみりゃ。 一方、萃香は口の中に、たしかに肉汁が広がっていくのを感じていた。 (へぇー! こいつの汗、肉汁なんだ!) 妙に感心した萃香は、引き続きティガれみりゃの顔を舐め回す。 最初は嬉し恥ずかし状態だったティガれみりゃだったが、 次第に嫌悪感をあらわにしだす。 『う~~~~、う~~~~』 レロレロレロレロレロレロ。 『うぁ、うぁぁ、うぁうぁうぁ~~~~』 なめ回されていくうちに、奇妙な感覚を覚えるティガれみりゃ。 肉まんの皮がふやけていくのと同時に、顔に適度に振動を与え続けられたことで、 なんともむずかゆい気持にさせられてしまっていた。 そして萃香は、とうとう一つの決断をする。 「う~~ん、思い切って食べてみるか」 肉汁はうまいし、これだけデカければちょっとくらいつまみ食いしても大丈夫だろう。 いや、むしろ宴会の幹事としてはツマミの味を確認しないわけにはいくまい。 萃香はそう己を納得させ、 口角を歪めて、牙をひからせる。 『う~~? れみりゃ、おねぇーさんにたべられちゃうどぉー♪』 顔を紅潮させ、 かぶりを振って、イヤイヤ♪とするティガれみりゃ。 だが、その顔は相変わらずの満面しもぶくれスマイルのままで、むしろ嬉しそうでさえある。 「さっすがティガれみりゃだどぉ♪ あんなにつよいおねぇーさんを、もぉーとりこにしちゃったどぉ♪」 親れみりゃも、何を勘違いしたか興奮気味。 変なところで耳年増なのか、2人のれみりゃは、萃香の「食べちゃう」発言を、 これからいっしょに「すっきりぃ~♪」しようという誘いに受け取ったらしい。 『れみりゃはじめてだからぁ~♪ やさしくしてねぇ~~ん♪』 どこで覚えたのか、恥じらいの台詞を口にするティガれみりゃ。 ちなみに、本当に「すっきり」するのが初めてかどうかは定かでない。 「はいはい、やさしくなっと」 萃香はティガれみりゃの勘違いを軽く受け流すと、 にぃーっと笑った後、徐々に口を開いていき、鬼の牙を煌めかせた。 次の瞬間。 ぱくり。 萃香の小さな(?)口が、 ティガれみりゃの下ぶくれ顔の端にかぶりつき、そのまま一部をえぐりとった。 『「う?」』 何が起こったかわからず、硬直するティガれみりゃと親れみりゃ。 構わずむしゃむしゃ租借し、モチモチとした皮と、上質な肉餡を舌の上で堪能する萃香。 口内にじゅわぁーと肉汁がひろがっていくのにつれて、萃香の顔が輝いていく。 「おっ、おいしぃー!」 パァーと輝く萃香の笑顔。 その笑顔と言葉で、超鈍感力の持ち主たるティガれみりゃも、ようやく事態に気付いた。 おそるおそる、視線を下に向けると、自慢のふくよかな顔の一部が、えぐれていた。 『いっ!』 認識した瞬間、痛みが一気に広がった。 『いだぃぃぃぃぃ!』 泣き出し、ジタバタと体を動かすティガれみりゃ。 だが、ティガれみりりゃの動きは、馬乗りになった萃香によって封じられ、 その場から逃げ出すことは出来ない。 『うぁぁぁぁぁっっ! うぁぁぁぁぁぁっっ!!』 ティガれみりゃは、唯一動かせる顔だけを左右に揺らし、わめき散らす。 『しゃくやぁー! はやくぎでぇぇ! ごぁいひどがいるぅぅぅぅっっ!!』 「ん~? 咲夜ならこないぞ。 今頃は山の上じゃないか?」 『うぞづくなどぉぉぉ! しゃくやはでみりゃが呼べばぎでぐれるどぉぉぉ! でみりゃはおぜうさまだからえらいんだどぉーー! そしたらおまえなんがぁっ!!』 「そりゃお前がアノ吸血鬼だったらそうかもしれないけどねぇ。お前は違うだろ、恐竜さん♪」 『うぞだどぉー! うぞだどぉーー! ぎゃおーーっ! ぎゃおーーーっ!!』 自分が紅魔館のお嬢様でないはずがない! れみりゃ種特有の絶対的矜持を揺るがされ、必死に抵抗するティガれみりゃ。 恐竜と言われて否定するつもりが、「ぎゃおー!」とやってしまうあたりが、 れみりゃ種の限界らしく、それはティガれみりゃといえど例外ではなかった。 一方、そんな苦しむティガれみりゃの姿を見た親れみりゃ。 当初は下ぶくれスマイルのままだった彼女も、 次第に冷や汗がうかびだし、顔が徐々に青くなり、いまではガクガクと小刻みに震えだしている。 親れみりゃは、ティガれみりゃを崇拝し、信じ切っていた。 その崇拝と信頼は、如何にティガれみりゃが劣勢に立たされても揺らぐことはなかった。 萃香に捕まれようと、持ち上げられようと、投げられようと。 ティガれみりゃにとっては何の問題もない。そう期待していた。 現に、ティガれみりゃは笑顔のまま立ち上がったではないか。 やっぱり凄い、きっと自分だったら最初に転んだ時に泣き出してしまっていただろう。 すごい、ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃとそっくりな自分も、きっといつかあんな風に……。 そう、思っていた。 だが、しかし。 今のティガれみりゃの姿は。 動きを封じられ、なすすべなく助けを呼ぶ光景は。 まるで、さきほどゲスまりさに食べられそうになった自分そっくりで……。 崇拝と信頼と憧れで栓をしていた、恐怖と不安がどっと湧き出てきて、 親れみりゃを混乱させる。 「うぁ、うぁ……」 笑顔は自然と消え、 目からは涙が流れ出す。 だめ! ティガれみりゃは負けちゃだめ! じゃないと! じゃないと! 私まで! 「ううううーっ! ティガでみりゃぁぁぁ!! だづんだどぉぉ!! がんばっでだどぉぉぉぉっっ!!!」 号泣し、ろれつの回らないまま叫び続ける親れみりゃ。 けれど、そんな親れみりゃの応援むなしく、 ティガれみりゃは、萃香に食べられ続ける。 『うあぁぁぁぁっっ!! うあぁぁぁぁぁっ! おねがぃぃぃぼぉうやべでぇぇぇぇっっ!!!』 耳を貸さず、萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔をパクパク食べ続ける。 「う~ん、こんなうまい肉まん初めてだよ♪」 「うっ!!」 "肉まん" その単語を聞いて、親れみりゃはビクッと体を硬直させる。 ちがう、ちがう、ちがう! れみりゃは、れみりゃは! 「ちがうどぉぉーーっ!! でみりゃはにぐまんじゃないどぉぉぉぉーーーっ!!」 まるで自分のことのように叫ぶ親れみりゃ。 だが、叫んだその刹那。 暴れるティガれみりゃから飛散した肉まんの小さな欠片が、 大口を開いた親れみりゃの口の中へスッポリと収まった。 「うっぎゃぁ!! ティガでみりゃのおかおぉぉ!!」 嫌悪し、吐き出そうとする親れみりゃ。 ほんの小さな破片とはいえ、崇拝対象の顔を口の中に入れてしまうなんて。 「うーっ! うーっ! ………ううっ!?」 吐き出そうと咳き込むその時、 親れみりゃは、誤ってティガれみりゃの欠片を噛んでしまった。 じゅわぁ~~~と口内に広がるアツアツの肉汁。 「う、うーっ!!?」 そのあまりの肉汁の美味しさに、 親れみりゃは反射的に、ティガれみりゃの欠片を租借しだす。 噛めば噛むほど味が染み出る肉餡の美味しさに、もはや罪悪感もなんのその、 親れみりゃは食べるのを止めることができなくなっていた。 ごっくん。 ティガれみりゃの欠片を堪能し、飲み込む親れみりゃ。 「う~♪ しあわせぇ~~だどぉ~~~♪ こんなにおいじぃにぐまんははじめてだどぉ~~~♪」 そして。 思わず、言ってしまった。 ぷっでぃんとも甲乙つけがたいその美味しさに、 親れみりゃは決して言ってはならないことを言ってしまったのだ。 そのことに、数秒後に気付き、 親れみりゃは震えが止まらなくなった。 ティガれみりゃ、食べちゃった。 とっても美味しかった。 美味しいなんだった? ぷっでぃん?おまんじゅう? ううん、ちがう。 おいしぃおいしぃにくまんさん。 あれ。 ティガれみりゃはおいしぃにくまん? それじゃ、れみりゃは? れみりゃはこーまかんの? おぜうさ? にく? れみりゃは……。 にくま。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」 親れみりゃの中で、決定的な何かが壊れた。 小さな体であげたその悲痛な叫びは、巨大なティガれみりゃと萃香がたてる音によってかき消されていった…。 数分後。 『た、たしゅげでぇぇ……』 既に下ぶくれ顔の三分の一近くを失ったティガれみりゃは、 ブクブクと泡を吹き、白目を向いて、ぴくぴくと体を痙攣させていた。 「……うっ、しまったな」 萃香はハタと我に返り、立ち上がる。 眼下で苦しむティガれみりゃを見つめて苦笑いする萃香。 「調子にのって食べ過ぎた。こんな食べ残しを土産にしちゃ悪いかな…」 とはいえ、この素晴らしい肉まんの味は、是非他の連中にも味わってもらいたいのだけど。 う~ん。と、しばし考える萃香。 すると。 「おや?」 ふと眼下の森をを見ると、そこには目の前でノビている恐竜そっくりな、小さいヤツがいるではないか。 その小さな恐竜は、逃げるでも戦うでもなく、ぼぉーとその場に突っ立ているように見えた。 「そういえばいたな。 あれって、おまえの子供?」 ティガれみりゃに話しかける萃香。 ティガれみりゃは、ずりずりと地面を這いつくばりながら萃香から逃げ出そうとしていた。 「なぁ、ちょっと!」 『は、はぃぃぃ!』 萃香に呼び止められたティガれみりゃは、 這うのを止め、両手で頭を抱えて、ブルブルと震え出す。 『う~~~~っ! う~~~~~~っ!』 やれやれと肩で息を吐く萃香。 この様子では聞くだけ無駄か。 「なぁ、お前…」 『ごめなざぃぃぃぃ!! あなだのかぢですぅぅぅぅう!!』 何を勘違いしたか、ティガれみりゃは萃香の方を向き、 へへぇー、へへぇーと、何度も両手をついて土下座を繰り返し始めた。 「お前、もういいよ。さっさとどっかへ行きなよ」 『は、はぃぃぃぃっ! ありがどぉぉございまずぅぅぅぅ!!』 ティガれみりゃは涙を流し、 そのままずりずりと地面を這い出す。 『うぅ~~~~~~、うぅ~~~~~』 痛くて、辛くて、悲しくて、悔しくて、恐くて、惨めで、 ただただ泣きながら、逃げ去っていくティガれみりゃ。 その後ろ姿を溜息で見送った後、 萃香は元の人間の少女大のサイズに戻り、 森で呆然と立つゆっくりゃザウルス……即ち、 先ほどティガれみりゃの欠片を食べてしまった親れみりゃの下へ降りる。 「あばっ、あぶあっ、あばばばばばばば……!」 親れみりゃの様子は、既に正常を失っていた。 目の焦点を失い、口から泡を吹き、足下に肉汁の水たまりを作って、 よれよれと体を左右に揺らし続けている。 「おい、おまえ!」 萃香が呼ぶと、親れみりゃは、反射的に体を強張らせる。 「はいぃぃっっ! なんでじょぉぉ!?」 じぃーと親れみりゃを眺める萃香。 やはり、先ほどの大きいヤツの子供なのだろうか? そんなことを考えつつ、口を開く。 「おまえも、あのデカイ奴みたいに食べられるんだよね?」 すると、親れみりゃは、 実にストレートな答えを返した。 「そうでずぅぅ! でびりゃばおいじぃにぐまんでずぅぅぅぅぅぅっっっっ!!」 口角から肉汁を飛ばしながら喋る親れみりゃ。 「にぐまんいっばいうむがらぁぁぁ! いじべないでぇぐだじゃいぃぃぃぃぃっっ!!!」 その顔は満面笑顔だが、笑ったままの目尻から大量の涙を流し続けている。 「ふーん、じゃ鬼らしくさらわせてもらおうかな」 よくよく考えれば、こいつ一体いればツマミの肉まんとしては充分すぎる量かもしれない。 そう考えた萃香は、しばらく親れみりゃを物色した後、 ひょいっと親れみりゃを抱え上げ、その場を後にした。 無機物のように抱え上げられた親れみりゃ。 移動中、その顔は常に笑顔であり、ずっと歌を口ずさみ続けていた。 「うぁ~~うぁ~~♪ あばばぁ~~♪ でびりゃばおいじぃ~にぐまんだどぉ~~~♪」 ……数時間後。 『ティ…ガ…ティガ…ティガ……』 息も絶え絶えに地面を這い続けるティガれみりゃ。 萃香に食べられた下ぶくれ顔は、既にかなりの部分が再生している。 だが、いくら表面的な体の傷がなおっても、 再生に栄養をまわしたぶん、体力の消耗は激しかった。 それに、深く心にえぐられた傷はそうそう治るものでもない。 『ティガ…れみ…りゃ……うぅ……』 少しでも気を紛らわせようと、弱々しく口を開くティガれみりゃ。 しかし、いくら歌を歌っても、 その気持は、痛みは、苦しみは、ちっとも晴れはしなかった。 おかしいな。 そうティガれみりゃは感じていた。 ついさっきまで、あんなに楽しく歌ったり踊ったりしていたのに。 あれ、そういえば、誰かといっしょにいたような? おかしいな、だれだっけ? とってもやさしくて、おうたもダンスもじょうずな子だったような。 思い出せないけど、きっとあの子は今頃たのしくおうたをうたっているんだろうな。 また、いっしょにおどりたい、な。 『うぅー…うぅー…うぁ…うぁ……』 森のはずれの湖のほとり。 そこでティガれみりゃは意識を失った。 『…………ZZZ』 それから、どれくらいの時間がたっただろうか? たまたま湖を訪れ休憩する、ゆっくりの一団がいた。 「むっ、むっきゅーーーーーっ!!??」 昏睡するティガれみりゃを見つけて叫んだのは、 かつてティガれみりゃによって、群れを壊滅させられた、あの胴体付きぱちゅりーだった……。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ5・さらばティガれみりゃ(予定)』 ============================ (あとがき) どうも、ティガれみりゃ第4回です。 今回は、『ティガれみりゃ3』から直接続くエピソードになります。 どうにも肉体的な虐め描写は苦手なのですが、 苦手ゆえに、敢えてこの前後編で挑戦してみました。 如何だったでしょうか? ……それにしても、ただの一発ネタのはずのティガれみりゃも、 随分書いた気がします。とりあえず次回で一区切りつける……予定です。 byティガれみりゃの人 (これって自分で名乗るものなんでしょうか?) ============================ このSSに感想を付ける
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ティガれみりゃ その4 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ3』の後編になります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 本家東方のキャラの性格口調、壊れ気味です すみません、まだ続きます。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 ======================== 4、誇りをかけた試練(後編) 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』 「ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪」 歌いながら森を往く2匹のゆっくり。 よったよったどたどた歩く、巨大ゆっくり・ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃの頭の上に乗っている、通常サイズのゆっくりゃザウルス。 全長20メートルの、くてくてだぼだぼのヌイグルミ風恐竜。 大きく開かれた口から覗く、れみりゃ種特有の下ぶくれスマイル。 その大きな顔の上の、恐竜の頭部の上では、 ゆっくりゃザウルスが、腹ばいになって、ティガれみりゃにしがみついている。 ゲスまりさに襲われて千切られた手足と尻尾は、もう殆ど回復しきっている。 ニコニコ笑いながら、体全体を左右に揺らしながらリズムをとっている。 『うっう~うぁうぁ~♪』 「うっう~うぁうぁ~♪」 ゆっくりゃザウルス……先だって子供を失った親れみりゃは、 その悲しみを払拭するかの如く、楽しげに歌う。 親れみりゃにとって、ティガれみりゃの存在は、 まさに希望であり、憧れであり、救世主であった。 このティガれみりゃと一緒なら、どんな困難も悲しみも乗り越えられる。 親れみりゃは、巨大なティガれみりゃに揺られながら、かつてない安心と勇気を感じていた。 ティガれみりゃもまた、親れみりゃのことを、 親友のように、妹のように、娘のように愛おしく感じていた。 その巨体故に、他の生物から常に避けられ続けるティガれみりゃにとって、 自分をこの上なく慕ってくれる親れみりゃの存在が、嬉しくて楽しくてたまらなかった。 この温かい気持ちをどう言えばいいのだろう? この胸にこみ上げる幸せをどう表現すればよいのだろう? そんな時、不器用なれみりゃ種がとる行動は一つ。 嬉しい時も、悲しい時も、わき上がる思いをあらわにして。 (歌っちゃおう♪) (踊っちゃおう♪) 『ティガ☆』 「れみ☆」 『りゃ☆』 「うー♪」 『「にぱぁ~~~♪」』 決まったぁー♪ 渾身の「れみりゃ☆うー」が決まり、 ますます幸福感に包まれる2人のれみりゃ。 そんな2人の前に、1人の少女が現れた。 「やぁ! ずいぶんと御機嫌だねぇ~」 少女は空を飛んでいた。 知識のあるゆっくりならば、その時点でその少女が人間ではないこと。 恐い人間よりもさらに恐ろしい、妖怪と呼ばれる存在であることに気付いただろう。 しかし、そんな知識、れみりゃ種に求めるのは酷である。 『うっうー♪ れみりゃはいつでも御機嫌だどぉー♪』 「うー♪ おねぇーさんだぁーれだどぉ?」 屈託無い笑顔で少女とのコミュニケーションに応じる2人のれみりゃ。 「……ふふ、まぁ名乗るほどのものじゃないさ」 そう言って口の端を歪める少女。 『う~? おねぇーさんの角、とぉ~~ってもかっこいいどぉ~~♪』 そう言って、目を輝かせるティガれみりゃ。 角。 そう、少女の頭には、二本の角が生えていた。 れみりゃ達が知るよしも無いが、この少女こそ、 既に幻想郷からは姿を消したといわれていた伝説の種族・"鬼"の一角、 小さな百鬼夜行、伊吹萃香であった。 「それより聞きたいんだけどさ……」 『う~、なんでもきくがいいどぉ♪』 「ゆっくりれみりゃってのは、おまえ達のことであってる?」 『「うーっ♪」』 嬉しそうに反応する、2人のれみりゃ。 『そうだどぉー! れみりゃは~~♪ ティガれみりゃだどぉ~~~♪』 ティガれみりゃは、両手を頭の横に持ち上げ、うぁうぁとリズムを取り出す。 『「うっうーうぁうぁ♪ うっうーうぁぅぁ♪」』 最高に上機嫌なれみりゃ達。 そんなれみりゃ達に、萃香の真意など図れるわけがなかった。 「そりゃよかったよ。おまえ達をさがしていたんだ」 『「う~~?」』 不思議そうに首を傾げる、れみりゃ達。 「そう、おまえ達がほしいんだ」 笑顔のまま屈託なく告げる萃香。 一方、れみりゃ達は、いっぱく置いた後、 両手を自分の頬に充てて、身をよじりだした。 『きゃーきゃー♪ おねぇーさんだいたんなんだどぉーー♪』 「すとれーとなあいのこくはくだどぉーーー♪」 頬を赤くして、きゃーきゃー騒ぐ、れみりゃ達。 れみりゃ達は、萃香の言葉を、プロポーズと勘違いしていた。 「ま、というわけでね、どっちか一人でいいんで、私についてきて欲しいだ」 空高くを指さす萃香。 『「う?」』 意味を理解しかねる、れみりゃ達。 萃香は、山の上の天上の地で、大宴会を開こうとしていた。 しかし、天上の地にあるツマミといえば桃くらいのもの。 やはりここは塩味のもの、お腹にたまるものも欲しい。 腹が減っては夜通しどんちゃん騒ぎもできぬ。である。 そこで、萃香はかねてから噂に聞いていた珍味。 ゆっくりれみりゃの肉まんを探していたのだ。 それも、ただのれみりゃ肉まんではない。 一層珍しく、美味しいとされる、ゆっくりゃザウルスの肉まんをだ。 そんな折、巨大な肉まん……もとい巨大なゆっくりゃザウルスがやって来るのを見つけたのだった。 話に聞いていたのとは、ずいぶんサイズが違うが、 まぁ本人達がれみりゃだと言っているのだから、そうなのだろう。 萃香は納得し、ティガれみりゃ達を連れ去ろうとする。 しかし、それに異を唱えたのは、他ならぬれみりゃ達だった。 「う~~~! イヤだどぉ~~~! れみりゃはもうおうちにかえりたいんだどぉ~~~!」 『う~~~、そうだどぉ~~~! れみりゃたちはおねぇーさんとはいけないんだどぉ』 ティガれみりゃは、親れみりゃをお家(紅魔館)に送り届ける途中であった。 もっとも、2人とも紅魔館の場所など知らず、適当に歌って踊って歩いているだけであったが。 「ふーんそっかぁ……それは困ったな」 ちっとも困った風じゃない顔をして、萃香は腕組みをして考えるフリをする。 「……よし! じゃあこうしよう! 私と勝負して勝った方が負けた方の言うことを聞く!」 明らかに強引な論法。 だが、れみりゃ相手には、このムチャクチャな単純さが功をそうした。 『う~~~、わかったどぉ♪ れみりゃがあいてになるどぉ♪』 「おっ、話がわかるじゃないか! デカイの!」 『そんなに褒められると、さすがに照れてしまうどぉ~~♪』 もじもじと体をよじるティガれみりゃ。 "デカイ"というのは、褒め言葉として捉えるらしい。 『う~♪ れみりゃが勝ったら、おねぇーさんの角が欲しいどぉ♪ それがあれば、れみりゃはさらにぱーふぇくとなれでぃーになれるどぉ♪』 「はいはい」 適当に流す萃香。 「きゃーっ! ティガれみりゃがさらにかっこよくなっちゃうどぉー!」 興奮する親れみりゃ。 ティガれみりゃは、そんな親れみりゃを手に乗せ、少し離れた場所の地面に降ろす。 『あぶないがらぁ~ちっちゃいれみりゃはそこで見ててぇ~♪』 「わかったどぉ! ティガれみりゃ~がんばるんだどぉ♪」 『う~♪ まかせるんだどぉ♪ ちっちゃいれみりゃもおうえんじでねぇ~ん♪』 「うー! まかせとけだどぉ♪」 「やれやれ……そろそろいいかい?」 待ちくたびれて、肩をまわす萃香。 『うーっ、準備おっけぇーだどぉ♪ おねぇーさんなんかイチコロだどぉー!』 「ふーん、はたしてそうかな♪」 萃香は笑みをこぼし、スペルカードを使用する。 鬼神"ミッシングパープルパワー" 『「ううううう~~~~っ!?」』 目を丸くして驚く、ティガれみりゃと親れみりゃ。 小さな人間の少女でしかなかった萃香が、みるみる間に大きくなり、 いまやティガれみりゃと同等か、それより一回り大きい姿になっていた。 『うー♪ おねぇーさんおっききぃどぉー』 自分より一回り多くなった萃香を見上げるティガれみりゃ。 「それじゃ、勝負開始といこうか!」 『うっうー! いっくどぉー♪』 ぎゃぉー! と叫びながら、ティガれみりゃが萃香に突進する。 いや、正しくは、それは突進などと呼べるシロモノではなかった。 どたばたどたばた。 短い手足を振り回しながら、えっちらおっちらやって来るティガれみりゃ。 (……お、遅っ) 萃香は、逆の意味で驚きつつ、 わけもなくティガれみりゃの突進をかわす。 『うっ?』 ドターン。 勢いそのままに前のめりに倒れるティガれみりゃ。 普通のれみりゃ種ならば、ここで泣き叫ぶところだが……。 『う~、ゆだんしちゃったどぉ♪』 ティガれみりゃは、笑顔のまま立ち上がる。 この点こそが、ティガれみりゃ最大の強点であった。 体の大きさや防御力ではない、言わば痛みを痛みとして認識しない超鈍感力。 根拠無きポジティブシンキングと思いこみ、そして実際に鈍い五感と思考の速度。 その自身が置かれた状況に対する"鈍さ"が、痛みや苦しみを和らげ、 いいこと・たのしいことだけを考えさせる。 そんな鈍感力こそが、ティガれみりゃの得た、ゆっくりするための切り札といえる。 『おねぇーさんはつよいからぁー、れみりゃもとっておきを披露するどぉ♪』 「ふーん、とっておきねぇ」 『くらっておどろくどぉ♪』 ティガれみりゃは、萃香に背を向けると、 両手を腰にあて、おしりと尻尾を左右に振り出した。 『ティガれみりゃの~、の☆う☆さ☆つ☆しっぽふりふりぃ~~だどぉ♪』 「きゃぁ~~~! しぇくしぃーーーすぎるどぉ♪」 ティガれみりゃの勇姿を見て、地上の親れみりゃが興奮する。 あんなセクシーな姿を見せられては、 どんな相手もメロメロになってしまわずにはいられない! 顔を紅潮させて叫ぶ親れみりゃは、本気でそう信じていた。 『うっふぅ~~~ん♪ 尻尾ふ~りぃふりぃ~~♪』 尻尾を左右に振りながら、徐々に萃香に近寄っていくティガれみりゃ。 だが、萃香は溜息をつくと、その尻尾をむんずと掴んだ。 『うっ?』 「そぉーら!」 『ううううっ!?』 萃香は尻尾を綱引きのように引っ張り、ティガれみりゃを引き寄せる。 ティガれみりゃは抗おうとジタバタするが、結局萃香の目の前まで引っ張られ、 「う~♪」と反転して萃香の方を向いた瞬間、両脇を掴まれ、空中に持ち上げられてしまった。 『うっうー♪ つかまっちゃったどぉ♪』 まだ余裕なティガれみりゃ。 『う~~~♪ たかいたかぁ~い♪』 いつも以上に高い位置からの眺めに、ご満悦だ。 「すっごいどぉー! ティガれみりゃがおそらをとんでるどぉーー!」 そんなティガれみりゃを見て、興奮する親れみりゃ。 「……はぁ」 ただ一人、萃香だけがテンションを下げていた。 『うー、おねぇーさんはつよくてやさしぃんだどぉ♪ れみりゃのめしつかいにしてあげるどぉ♪』 萃香が自分のために高い高いをしてくれているものと信じるティガれみりゃ。 観戦している親れみりゃにしても、萃香がティガれみりゃの力に恐れをなして、 "こうさんです~あなたがいちばんです~"とあがめているのだと勝手に思いこんでいる。 (もういっか。宴会に遅れてもなんだし) れみりゃ種のペースに巻き込まれているのがバカらしくなった萃香は、 さっさと勝負を決めることにする。 「そりゃ!」 『うっ!?』 抱え上げたティガれみりゃを、背中から地面に叩きつける萃香。 ドシーンと、土煙が舞い上がる。 『う~~~♪ おねぇーさんつよいどぉ♪』 地面に大の字になったまま、萃香を見上げるティガれみりゃ。 思い切り叩きつけたにもかかわらず、まだ笑顔でいるティガれみりゃを見て、 鈍さだけは大したものだと呆れる萃香。 萃香は、ティガれみりゃの上に馬乗りになり、 大の字に広げられたティガれみりゃの腕を両手で押さえつけて固定する。 『うぅ~~♪ おねぇーさんのえっちぃ~~♪』 「きゃー! あかちゃんたぢには、みぜられないどぉー!」 勝手に興奮するティガれみりゃと親れみりゃ。 それに対し、萃香は冷静にティガれみりゃの体を眺めて、吟味する。 こんなやつが本当に絶品珍味なのだろうか? だんだんと不安になってくる萃香。 ゆっくりが出没しはじめたのは最近のことなので、 鬼にしてもゆっくりに関する知識は殆ど持ちあわせていたなかった。 「うーん……いちおう味見してみようかな」 萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔に、そっと顔を近づける。 そして、舌をのばして、ほっぺたを舐め上げた。 『くしゅぐったぁーい♪』 照れるティガれみりゃ。 一方、萃香は口の中に、たしかに肉汁が広がっていくのを感じていた。 (へぇー! こいつの汗、肉汁なんだ!) 妙に感心した萃香は、引き続きティガれみりゃの顔を舐め回す。 最初は嬉し恥ずかし状態だったティガれみりゃだったが、 次第に嫌悪感をあらわにしだす。 『う~~~~、う~~~~』 レロレロレロレロレロレロ。 『うぁ、うぁぁ、うぁうぁうぁ~~~~』 なめ回されていくうちに、奇妙な感覚を覚えるティガれみりゃ。 肉まんの皮がふやけていくのと同時に、顔に適度に振動を与え続けられたことで、 なんともむずかゆい気持にさせられてしまっていた。 そして萃香は、とうとう一つの決断をする。 「う~~ん、思い切って食べてみるか」 肉汁はうまいし、これだけデカければちょっとくらいつまみ食いしても大丈夫だろう。 いや、むしろ宴会の幹事としてはツマミの味を確認しないわけにはいくまい。 萃香はそう己を納得させ、 口角を歪めて、牙をひからせる。 『う~~? れみりゃ、おねぇーさんにたべられちゃうどぉー♪』 顔を紅潮させ、 かぶりを振って、イヤイヤ♪とするティガれみりゃ。 だが、その顔は相変わらずの満面しもぶくれスマイルのままで、むしろ嬉しそうでさえある。 「さっすがティガれみりゃだどぉ♪ あんなにつよいおねぇーさんを、もぉーとりこにしちゃったどぉ♪」 親れみりゃも、何を勘違いしたか興奮気味。 変なところで耳年増なのか、2人のれみりゃは、萃香の「食べちゃう」発言を、 これからいっしょに「すっきりぃ~♪」しようという誘いに受け取ったらしい。 『れみりゃはじめてだからぁ~♪ やさしくしてねぇ~~ん♪』 どこで覚えたのか、恥じらいの台詞を口にするティガれみりゃ。 ちなみに、本当に「すっきり」するのが初めてかどうかは定かでない。 「はいはい、やさしくなっと」 萃香はティガれみりゃの勘違いを軽く受け流すと、 にぃーっと笑った後、徐々に口を開いていき、鬼の牙を煌めかせた。 次の瞬間。 ぱくり。 萃香の小さな(?)口が、 ティガれみりゃの下ぶくれ顔の端にかぶりつき、そのまま一部をえぐりとった。 『「う?」』 何が起こったかわからず、硬直するティガれみりゃと親れみりゃ。 構わずむしゃむしゃ租借し、モチモチとした皮と、上質な肉餡を舌の上で堪能する萃香。 口内にじゅわぁーと肉汁がひろがっていくのにつれて、萃香の顔が輝いていく。 「おっ、おいしぃー!」 パァーと輝く萃香の笑顔。 その笑顔と言葉で、超鈍感力の持ち主たるティガれみりゃも、ようやく事態に気付いた。 おそるおそる、視線を下に向けると、自慢のふくよかな顔の一部が、えぐれていた。 『いっ!』 認識した瞬間、痛みが一気に広がった。 『いだぃぃぃぃぃ!』 泣き出し、ジタバタと体を動かすティガれみりゃ。 だが、ティガれみりりゃの動きは、馬乗りになった萃香によって封じられ、 その場から逃げ出すことは出来ない。 『うぁぁぁぁぁっっ! うぁぁぁぁぁぁっっ!!』 ティガれみりゃは、唯一動かせる顔だけを左右に揺らし、わめき散らす。 『しゃくやぁー! はやくぎでぇぇ! ごぁいひどがいるぅぅぅぅっっ!!』 「ん~? 咲夜ならこないぞ。 今頃は山の上じゃないか?」 『うぞづくなどぉぉぉ! しゃくやはでみりゃが呼べばぎでぐれるどぉぉぉ! でみりゃはおぜうさまだからえらいんだどぉーー! そしたらおまえなんがぁっ!!』 「そりゃお前がアノ吸血鬼だったらそうかもしれないけどねぇ。お前は違うだろ、恐竜さん♪」 『うぞだどぉー! うぞだどぉーー! ぎゃおーーっ! ぎゃおーーーっ!!』 自分が紅魔館のお嬢様でないはずがない! れみりゃ種特有の絶対的矜持を揺るがされ、必死に抵抗するティガれみりゃ。 恐竜と言われて否定するつもりが、「ぎゃおー!」とやってしまうあたりが、 れみりゃ種の限界らしく、それはティガれみりゃといえど例外ではなかった。 一方、そんな苦しむティガれみりゃの姿を見た親れみりゃ。 当初は下ぶくれスマイルのままだった彼女も、 次第に冷や汗がうかびだし、顔が徐々に青くなり、いまではガクガクと小刻みに震えだしている。 親れみりゃは、ティガれみりゃを崇拝し、信じ切っていた。 その崇拝と信頼は、如何にティガれみりゃが劣勢に立たされても揺らぐことはなかった。 萃香に捕まれようと、持ち上げられようと、投げられようと。 ティガれみりゃにとっては何の問題もない。そう期待していた。 現に、ティガれみりゃは笑顔のまま立ち上がったではないか。 やっぱり凄い、きっと自分だったら最初に転んだ時に泣き出してしまっていただろう。 すごい、ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃとそっくりな自分も、きっといつかあんな風に……。 そう、思っていた。 だが、しかし。 今のティガれみりゃの姿は。 動きを封じられ、なすすべなく助けを呼ぶ光景は。 まるで、さきほどゲスまりさに食べられそうになった自分そっくりで……。 崇拝と信頼と憧れで栓をしていた、恐怖と不安がどっと湧き出てきて、 親れみりゃを混乱させる。 「うぁ、うぁ……」 笑顔は自然と消え、 目からは涙が流れ出す。 だめ! ティガれみりゃは負けちゃだめ! じゃないと! じゃないと! 私まで! 「ううううーっ! ティガでみりゃぁぁぁ!! だづんだどぉぉ!! がんばっでだどぉぉぉぉっっ!!!」 号泣し、ろれつの回らないまま叫び続ける親れみりゃ。 けれど、そんな親れみりゃの応援むなしく、 ティガれみりゃは、萃香に食べられ続ける。 『うあぁぁぁぁっっ!! うあぁぁぁぁぁっ! おねがぃぃぃぼぉうやべでぇぇぇぇっっ!!!』 耳を貸さず、萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔をパクパク食べ続ける。 「う~ん、こんなうまい肉まん初めてだよ♪」 「うっ!!」 "肉まん" その単語を聞いて、親れみりゃはビクッと体を硬直させる。 ちがう、ちがう、ちがう! れみりゃは、れみりゃは! 「ちがうどぉぉーーっ!! でみりゃはにぐまんじゃないどぉぉぉぉーーーっ!!」 まるで自分のことのように叫ぶ親れみりゃ。 だが、叫んだその刹那。 暴れるティガれみりゃから飛散した肉まんの小さな欠片が、 大口を開いた親れみりゃの口の中へスッポリと収まった。 「うっぎゃぁ!! ティガでみりゃのおかおぉぉ!!」 嫌悪し、吐き出そうとする親れみりゃ。 ほんの小さな破片とはいえ、崇拝対象の顔を口の中に入れてしまうなんて。 「うーっ! うーっ! ………ううっ!?」 吐き出そうと咳き込むその時、 親れみりゃは、誤ってティガれみりゃの欠片を噛んでしまった。 じゅわぁ~~~と口内に広がるアツアツの肉汁。 「う、うーっ!!?」 そのあまりの肉汁の美味しさに、 親れみりゃは反射的に、ティガれみりゃの欠片を租借しだす。 噛めば噛むほど味が染み出る肉餡の美味しさに、もはや罪悪感もなんのその、 親れみりゃは食べるのを止めることができなくなっていた。 ごっくん。 ティガれみりゃの欠片を堪能し、飲み込む親れみりゃ。 「う~♪ しあわせぇ~~だどぉ~~~♪ こんなにおいじぃにぐまんははじめてだどぉ~~~♪」 そして。 思わず、言ってしまった。 ぷっでぃんとも甲乙つけがたいその美味しさに、 親れみりゃは決して言ってはならないことを言ってしまったのだ。 そのことに、数秒後に気付き、 親れみりゃは震えが止まらなくなった。 ティガれみりゃ、食べちゃった。 とっても美味しかった。 美味しいなんだった? ぷっでぃん?おまんじゅう? ううん、ちがう。 おいしぃおいしぃにくまんさん。 あれ。 ティガれみりゃはおいしぃにくまん? それじゃ、れみりゃは? れみりゃはこーまかんの? おぜうさ? にく? れみりゃは……。 にくま。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」 親れみりゃの中で、決定的な何かが壊れた。 小さな体であげたその悲痛な叫びは、巨大なティガれみりゃと萃香がたてる音によってかき消されていった…。 数分後。 『た、たしゅげでぇぇ……』 既に下ぶくれ顔の三分の一近くを失ったティガれみりゃは、 ブクブクと泡を吹き、白目を向いて、ぴくぴくと体を痙攣させていた。 「……うっ、しまったな」 萃香はハタと我に返り、立ち上がる。 眼下で苦しむティガれみりゃを見つめて苦笑いする萃香。 「調子にのって食べ過ぎた。こんな食べ残しを土産にしちゃ悪いかな…」 とはいえ、この素晴らしい肉まんの味は、是非他の連中にも味わってもらいたいのだけど。 う~ん。と、しばし考える萃香。 すると。 「おや?」 ふと眼下の森をを見ると、そこには目の前でノビている恐竜そっくりな、小さいヤツがいるではないか。 その小さな恐竜は、逃げるでも戦うでもなく、ぼぉーとその場に突っ立ているように見えた。 「そういえばいたな。 あれって、おまえの子供?」 ティガれみりゃに話しかける萃香。 ティガれみりゃは、ずりずりと地面を這いつくばりながら萃香から逃げ出そうとしていた。 「なぁ、ちょっと!」 『は、はぃぃぃ!』 萃香に呼び止められたティガれみりゃは、 這うのを止め、両手で頭を抱えて、ブルブルと震え出す。 『う~~~~っ! う~~~~~~っ!』 やれやれと肩で息を吐く萃香。 この様子では聞くだけ無駄か。 「なぁ、お前…」 『ごめなざぃぃぃぃ!! あなだのかぢですぅぅぅぅう!!』 何を勘違いしたか、ティガれみりゃは萃香の方を向き、 へへぇー、へへぇーと、何度も両手をついて土下座を繰り返し始めた。 「お前、もういいよ。さっさとどっかへ行きなよ」 『は、はぃぃぃぃっ! ありがどぉぉございまずぅぅぅぅ!!』 ティガれみりゃは涙を流し、 そのままずりずりと地面を這い出す。 『うぅ~~~~~~、うぅ~~~~~』 痛くて、辛くて、悲しくて、悔しくて、恐くて、惨めで、 ただただ泣きながら、逃げ去っていくティガれみりゃ。 その後ろ姿を溜息で見送った後、 萃香は元の人間の少女大のサイズに戻り、 森で呆然と立つゆっくりゃザウルス……即ち、 先ほどティガれみりゃの欠片を食べてしまった親れみりゃの下へ降りる。 「あばっ、あぶあっ、あばばばばばばば……!」 親れみりゃの様子は、既に正常を失っていた。 目の焦点を失い、口から泡を吹き、足下に肉汁の水たまりを作って、 よれよれと体を左右に揺らし続けている。 「おい、おまえ!」 萃香が呼ぶと、親れみりゃは、反射的に体を強張らせる。 「はいぃぃっっ! なんでじょぉぉ!?」 じぃーと親れみりゃを眺める萃香。 やはり、先ほどの大きいヤツの子供なのだろうか? そんなことを考えつつ、口を開く。 「おまえも、あのデカイ奴みたいに食べられるんだよね?」 すると、親れみりゃは、 実にストレートな答えを返した。 「そうでずぅぅ! でびりゃばおいじぃにぐまんでずぅぅぅぅぅぅっっっっ!!」 口角から肉汁を飛ばしながら喋る親れみりゃ。 「にぐまんいっばいうむがらぁぁぁ! いじべないでぇぐだじゃいぃぃぃぃぃっっ!!!」 その顔は満面笑顔だが、笑ったままの目尻から大量の涙を流し続けている。 「ふーん、じゃ鬼らしくさらわせてもらおうかな」 よくよく考えれば、こいつ一体いればツマミの肉まんとしては充分すぎる量かもしれない。 そう考えた萃香は、しばらく親れみりゃを物色した後、 ひょいっと親れみりゃを抱え上げ、その場を後にした。 無機物のように抱え上げられた親れみりゃ。 移動中、その顔は常に笑顔であり、ずっと歌を口ずさみ続けていた。 「うぁ~~うぁ~~♪ あばばぁ~~♪ でびりゃばおいじぃ~にぐまんだどぉ~~~♪」 ……数時間後。 『ティ…ガ…ティガ…ティガ……』 息も絶え絶えに地面を這い続けるティガれみりゃ。 萃香に食べられた下ぶくれ顔は、既にかなりの部分が再生している。 だが、いくら表面的な体の傷がなおっても、 再生に栄養をまわしたぶん、体力の消耗は激しかった。 それに、深く心にえぐられた傷はそうそう治るものでもない。 『ティガ…れみ…りゃ……うぅ……』 少しでも気を紛らわせようと、弱々しく口を開くティガれみりゃ。 しかし、いくら歌を歌っても、 その気持は、痛みは、苦しみは、ちっとも晴れはしなかった。 おかしいな。 そうティガれみりゃは感じていた。 ついさっきまで、あんなに楽しく歌ったり踊ったりしていたのに。 あれ、そういえば、誰かといっしょにいたような? おかしいな、だれだっけ? とってもやさしくて、おうたもダンスもじょうずな子だったような。 思い出せないけど、きっとあの子は今頃たのしくおうたをうたっているんだろうな。 また、いっしょにおどりたい、な。 『うぅー…うぅー…うぁ…うぁ……』 森のはずれの湖のほとり。 そこでティガれみりゃは意識を失った。 『…………ZZZ』 それから、どれくらいの時間がたっただろうか? たまたま湖を訪れ休憩する、ゆっくりの一団がいた。 「むっ、むっきゅーーーーーっ!!??」 昏睡するティガれみりゃを見つけて叫んだのは、 かつてティガれみりゃによって、群れを壊滅させられた、あの胴体付きぱちゅりーだった……。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ5・さらばティガれみりゃ(予定)』 ============================ (あとがき) どうも、ティガれみりゃ第4回です。 今回は、『ティガれみりゃ3』から直接続くエピソードになります。 どうにも肉体的な虐め描写は苦手なのですが、 苦手ゆえに、敢えてこの前後編で挑戦してみました。 如何だったでしょうか? ……それにしても、ただの一発ネタのはずのティガれみりゃも、 随分書いた気がします。とりあえず次回で一区切りつける……予定です。 byティガれみりゃの人 (これって自分で名乗るものなんでしょうか?) ============================ このSSに感想を付ける
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ジャイロで政争に敗れた者達が分裂して建国した国家。もともとはジャイロの一部であった。 ジャイロの西に広がる"迷いの森"を挟んで存在する。 ジャイロの半分ほどの国土を持つ。 ジャイロと同じような政治体制を持つが、基本的に国民が統制されている一方で経済の自由化が進んでおり、人口はジャイロの1/6ほどながら、その経済力から国力はジャイロと拮抗しつつあり、"迷いの森"が行く手を阻んでいることもあって、ジャイロとの冷戦状態が続いている。 国民に対しては、その政治体制を揺るがそうとしない限り、それなりの自由が与えられている。 他国に対しては高圧的な態度を取る一方、その国力のほとんどはジャイロを滅ぼすために費やされており、積極的にジャイロ以外の国に攻め入ることはしない。 場合によっては、対ジャイロとして周辺諸国と同盟関係を結ぶこともある。 建国理由により、繁栄のなかにも常に悲壮感が潜み、二十代のランフォード=ソリッドやクロード=カイエンやジェイク=ヴィルヘルムが要職に付くなど、適性があれば本当に年齢・性別・種族などはいとわない。 首都はティガロザナヴ。 迷いの森 ティガロとジャイロの間に広がる広大な森。 ほとんどが光合成+食肉性の植物で占められており、木々が放つ幻術系の魔術によって、その森に入り込んだ者は感覚を狂わされてしまう。 森に侵入した虫や動物を捕食して、着々とその勢力を広げようとしている。